HOME:広田せい子のハーブガーデン

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ピンクの杖

「転ばぬ先の杖」という諺がある。

ハードな園芸作業で腰を痛めてからというもの、
悲しいかな、歩き方がアンバランスになってしまった。
60歳を過ぎると転んだら最後。骨折で1か月も入院すると、
歩けなくなってしまうという。

いやいやながらも杖を買うことになった。
今まで、まさか自分が杖をついて歩くなど夢にも考えたことがなかったから、
予備知識がまったくない。
近くの介護センターで、最も軽くて若々しい杖を選んだ。
すみれ色を帯びたローズピンクの合金製で、高さが調節できる。
最初は慣れなくて、つまづきそうになったものの、今では何とか使えるようになった。

それにしても、杖の世界は奥深いものがある。
新宿のヒルトンホテルの地下街にある「チャップリン」という専門店には、
手描き模様の婦人物から、
象牙やシルバーなどの精緻な彫刻入りのアンティックな物まで、
数えきれない杖が並んでいた。
ピンからキリまでというが、キリはおそらく1千万円は超しているにちがいない。

一方、例の百円ショップにも杖がある。
いつも通る店の、通路に面した場所に置いてあるが、
30本ほど入荷したと思ったら、翌日前を通るとほとんど完売している。
私を含めて杖を必要としている人口は年々増えているのだ。

最近は、ピンクの杖で出かけることが多くなった。
以前ほど、内心の葛藤も少なくなり、
杖の色にファッションを合わせる余裕もできてきた。
ところが、昨日のこと、がっくりこけそうになった。
目黒の蕎麦屋で夫と昼食をとったが、この店は手で開閉する昔ながらの入り口だ、
客を送り出す際に店員が戸を閉める時に、ひとりひとり声をかけている。
近頃は珍しいほど奥ゆかしいマナーだ。

背広姿のサラリーマンには「お仕事頑張ってください」
学生風の男性には「またどうぞ」
奥様風には「またのお越しを、お待ちしております」

そして私には、何といったと思う?
ガーン!!!
 「お達者で」

そう、いくら杖をピンクにしても、杖は杖。
学生アルバイトの女の子には、お婆さんに見えるのだろう。
「お達者で」ごときでショックを受けるとは、まだまだ修行がたりないぞ!」
という声が、聞こえたような気がした。
そして、長い老いの坂の入り口に立って、
これからどんなことが待ち受けているのか、と思うと、
杖を持つ手にも自然と力が入っていた。

HOME : TOP

Monthly

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。