アメリカ ・布の万華鏡

夏も終わりに近い頃、
アメリカのハーブ仲間から、ちょっと大きめなエアメールが届いた。
茶封筒の上からでもわかるぷくぷくした感触、でも、それほど重くはない。
いったい何かしら・・・・。
わくわくしながら開けてみると、カラフルで丸い形のものが洪水のようにこぼれ落ちた。
「あっ、ヨーヨーキルトだわ」
思わず大きな声で叫ぶほど、何と嬉しいプレゼントだろう。
以前、オハイオ州クリーブランドで開かれたアメリカハーブ協会の集まりで知り合ったビクトリアは、
ときどきこうしたサプライズで、私を喜ばせてくれる。
彼女の家でお茶をご馳走になったとき、家中に飾られたパッチワークの数々を見せてもらった。
ゲストルームにはグランドグランドマザーが刺したという質素な、しかし気品と風格のあるベッドカバー、
彼女が結婚したときに、友人たちがピースを持ち寄ってシャワーをしてくれたというベッドカバーは、クラシックな花のパターンだった。めくって見せてくれた裏の隅には、参加した人たちの名前が気取った書体で刺繍されていた。
ソファに置いたひざ掛けも、食卓の上のテイコゼーやコースター、犬専用のマットまでパッチワ-クが施されている。
インテリアと実用を兼ねたパッチワークの素晴らしさに圧倒された私が、
「これなら簡単そうね」と、ヨーヨーキルトのコースターを手に取ったのを覚えていたのかもしれない。
ビクトリアからの手紙によると、家族の古着や手芸友達と交換した布、スカーフ、ハンカチ、バザーの売れ残りの布から、美しいものを選り分け、家事の合間に作ってくれたという。

ヨーヨーキルトとは、布地を丸く切り、周囲をぐし縫いして縮めたものだ。
おもちゃのヨーヨーに形が似ていることから、アメリカではこうよばれている。
興味深いことに、イギリスではパフというそうだ。ギャザーを寄せてふっくらとした形からきているのだろう。
それにしても、いつも多忙なグロリアがセイコのために、よく作ってくれたものだ。
アメリカ独特の鮮やかな色がミックスしたヨーヨーを、白い紙の上に並べ、
混ぜては並べ、並べては混ぜているうちに、何かに似ていることに気がついた。
そう、これは万華鏡。
太平洋の上空を飛んで、はるかなアメリカからやって来たカレイドスコープだ。
こんなふうに並べて、白いセーターの背中につけたら、どうだろう。
それとも?
白昼夢を見ていた晩夏の昼下がりが、なぜか思い出される日だった。