柳宗民先生のダマスクローズ

透きとおった朝の空気の中で、ダマスクローズが花を開いた。
辺りにはバラの香水そのままの、馥郁とした香りがただよっている。
この花が咲く度に思い出すのは、
1988年の新築祝いにこのバラを贈ってくださった
今は亡き柳宗民先生である。
1985年に、NHK「趣味の園芸」に初出演して以来、
スタジオやイベント会場などで、さまざまなことを教えていただいた。
目を細めて優しく笑い、いつも穏やかな話し方をなさる方だった。
手袋をはめずに庭仕事をしている私の手は、いつも荒れている。
先生の前で思わず手を隠したら「手にもっと自信を持ちなさい。
素晴らしいじゃないですか。この働く手は勲章ものですよ」
と御自分の手と比べてみせながら、話してくださった日が懐かしい。
振り返ってみたら、
このダマスクローズは、植えてもう20年になる。
2年前に旅立たれた柳先生は、今頃天国で何をなさっているのだろう。
神様の花園に、きっときれいな花を咲かせているのに違いない。