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手袋物語り 家族を助けた手編みの手袋



私のクローゼットの引き出しには、手編みの手袋が入っている。
しかし、眺めたり触れることはあっても、これまでまだ一度も使ったことが無い。




今から5~6年前、厳冬の釧路へ講演に出かけたことがあった。
ハーブに寄せる関心がひじょうに高いこの地域では、熱心な参加者ばかり。あっという間に時間が経ち、気持ちよく講演会を終えることが出来た。
演壇から降りると、我勝ちに駆け寄ってきてサインや握手を求める方も多く、
一段落してほっと一息ついたときに、この手袋が私の手元にあったような気がする。
あるいは夜の懇親会で、手渡されたのだったろうか。

はっきりと覚えているのは、私と同年代の婦人から聞いた、この手袋の由来だった。
「私たちは、たいへん暮らしに困っていた時期がありました。
まだ子供たちは小さく、母が働ける職場も近くにはありません。
母は、家で子供の世話をしながらでもできる手作りの物を売って、
収入を得ることを考えました。
けれども、これといった特技も無い母です。
悩み、困っていた時に、大事にしていた外国土産の手袋を思い出しました。
そして、これだけの模様が入っているのだから、
普通の手袋よりも高く売れると思ったのだそうです」




母にとっては初めて持つ編み棒でした。
見よう見真似で大胆にも、編みこみ模様入りの5本指の手袋に挑戦したのです。
編んでは解き、解いては編んで、とうとう手袋が完成しました。
努力家の母は、頑張り屋。
上手に編めるようになるにつれて評判になり、
しだいによい値段で売れるようになってきました。
わが家はこの手袋のおかげで、支えられてきたようなもの。
ほんとうにありがたいと思っています」

私の手元にある手袋を、よく見てみよう。
手の甲には、クレマチスの花のような模様を編みこみ、
指の1本1本にも飾りの模様を入れてある。
手のひら側には、均等に斜め格子が入り、
側面にもすっきりと縁取り模様が施されている。

それにしてもなぜ私にこんな大事な手袋をくださったのだろう。
いつも素手でハーブの世話をしているので、
テレビに写る手元が荒れているのを、心配してのことかも・・・。

家族を助けるために、必死で編んだというこの手袋を、
私はもったいなくて使うことが出来ないでいる。

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