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スペシャル桜

晩秋の青く澄み切った空の下、
夫の撮影についてJR青梅線へ朝早く出発。
調布や府中の辺りの街路樹は、イチョウ並木が多く、
朝日を受けて純金のように輝いている。

終わりに近いサザンカと、咲き始めたツバキも一緒に見られる季節なので、
車窓ウォッチングは右も左も忙しい。

目的の撮影を終えると、
待ってました! お昼の時間!

奥多摩地方は、手打ち蕎麦の店がじつに多い。
一応めぼしい店を2、3メモして行ったのだが、
青梅駅前を過ぎて奥多摩へ向かう途中、
何となくよさそうなたたずまいの店を見つけた。
50メートルほどバックして「蕎麦榎戸」へ。
入り口に置いた鉢には、黄色い蝋梅の花がさりげなく活けてあり、
季節を告げている。

予感どおり、大当たり!1!
店の雰囲気もよく、輪島塗の食器も品がよい。

夫は十割蕎麦を2枚と天麩羅盛り合わせ、
私はざる蕎麦と、こんにゃくの刺身、桜海老のかき揚げを注文した。
ねっとりした手作りこんにゃくは、
フレンチドレッシングとワサビ醤油でいただくが、
どちらもぴったりとマッチ。
衣がはぜて、花が咲いたように美しい桜海老のかき揚げもおいしかったのに、
食べにくいのが難点だった。
本命の蕎麦は、味にうるさい夫が「蕎麦の香りがする」とほめ、
もう1枚注文したのだから、かなり上位にランクされたと思う。

帰路は「道の駅」で、山の幸を買って帰ることにしたが、
なかなか見つからない。
相変わらず車窓からウオッチングを楽しみながらドライブしていると、
軍畑の橋を渡ったところで、右側に薄ピンクの花がちらちらと見える。
「梅の花? ま、まさか桜ではないわよね」と言いつつ近づいてみると、
やはり桜ではないか。







小さな祠の両側に植えられた桜は、どの枝にもびっしりと花が咲き、
冬桜とはまるでちがう。
冬桜といえば、数年前友人と鬼石の冬桜を見に、群馬県へ行ったことがあった。
日曜日はバスが運休で、往復タクシーを使う羽目になったうえに、
7000本もあるという冬桜があまりにも侘しすぎて、がっかりしたことを思い出した。
それに観光・人寄せの意図が見え見えだったから、興冷めしたこともある。
それに引き換え、小さな祠の神様にお供えした善意の優しい桜は、
花の色も濃く、花つきも格段に優る。
きっとこの地域の守り神様なのだろう。
それにしても、今頃こんな見事に咲く桜の品種名を、ぜひ知りたいものだ。

近所のお宅を3軒ほど尋ねてみたが、あいにく留守で残念。
自転車で通りかかったお年寄りに聞いてみると、
「冬に咲くからフユザクラだっぺ」

すると背後から「スペシャル桜」と、声がかかった。
振り返ってみると、アメリカの青年だろうか、
にこにこ顔でうなづいている。

「何でも詮索するのが私の悪い癖よね。スペシャル桜か、これ、いただきだわ。
これからは分らないことがあったら、スペシャル○○といって、にっこりしてみようかな」

車に戻って夫に話しかけると、彼は笑ってうなづいていた。

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