北欧の友に贈ったスパイシーなブーケ

友人のアグネータ・フロックさんは、スエーデン生まれの切り絵作家だ。
彼女の指と鋏から生まれるアートは、
誰にも真似のできない独特の世界観に満ちている。
野に咲く草花や森に住む魔物たち、小さな生き物、古代神話に登場する美女にヒーローなどなど、
作品を眺めながら、
夢が覚めないようにと希いつつも、いつまでも溺れていたいような別世界で遊ばせてもらえるのだ。
2013年にスエーデンを訪れた時は、緑に囲まれた彼女のアトリエに滞在して、
のんびりと過ごした日々が懐かしい。
2002年に日本で最初の個展を開いて以来、
好評を博したNHKのBS放送によるドキュメント番組と相まって、
彼女のファンの数は年を追うごとに増えていった。
展覧会はもう何回目になるだろうか。
今年の秋も玉川の高島屋で、
彼女の大学時代に専攻したテキスタイルの作品展示を含めた、
大々的なエキジビションが開催された。
初日から数日後、
日本料理で名高い「たん熊」に夫婦同士の席を設け、
京懐石をいただきながら、楽しい話に花が咲いた。
特に彼女の御主人のパールさんと夫の尚敬は、
旧交を温める話題が絶えず、懐かしそうだった

花といえば、当日プレゼントしたのがこのブーケだ。
今年は天候不順で、残念ながら庭に咲く花の種類も少ない。
幸いにも、香りのよい葉がたくさんあるので、
スパイシーな香りのするタッジーマッジーを作ってみた。
芳醇な香りのクラシックなバラをセンターに置き、
周りに彩りとして配置したのはサルビア・アズレウス、プランパゴ、セロシア、
セイヨウニンジンボクのプルプレア、ローズヒップ、タイバジルにイネ科の牧草など。
外周は、いずれも強い芳香のハーブやスパイスを使い、
ローズゼラニューム、カルダモン、シナモン、ジンジャー、ベイリーフの葉でまとめた。

スエーデンの人々はカルダモンがお気に入りで、
紅茶やコーヒーに混ぜて飲むことが多い。
このことを思い出して、庭のカルダモンの葉先を使ってみたら、
案の定、このエキゾチックな香りを気に入ってくれたたようで、
「疲れが取れるように、今夜はベッドサイドに置くわ」と、嬉しそうな笑顔が心に残った。
様々な国の植物の香気が枕元で混じり溶け合い、溶け合って、
彼女に深い眠りをもたらしたにちがいない。
11月8日にアグネータさんはスエーデンへ帰国した。
「大好きな日本」と口癖のように言っていた彼女は、次回はどのような世界を見せてくれるのか。
どんなところにインスパイアされたのだろうか、
そろそろメイルが届く頃だ。