猛暑の庭に吹く風

私は、なんと勝手気ままなのだろう。
毎日毎日降り続く梅雨の間は、腐りかけ溶けてしまいそうな花や茎を眺めながら、
「雨はもうたくさん! 1時間でもいいから晴れ間がほしい」と本気で願っていた。
けれども、連日のように猛暑が続くと、今度は庭の草花が枯れないように雨が降ってほしいと、
天の神様に手を合わせるのだから、我ながらいい加減だと思う。
水やりは、朝が勝負だ。
4時半には、もう目覚めているから、私は早起き鳥の仲間かもしれない。
庭へ続く大きなガラス戸を開けると、
夜の間咲いていたジャスミンの残り香が、まだかすかに漂っている。
朝日を浴びて咲いているのは、オニユリとバラとサルビア・グラニチカ・・・・・。

日中に比べて、朝は涼風が吹くことが多い。
木の葉伝いに、かすかな音を立てて風が渡ってくることもあれば、
突然目の前の花が揺れて、風の居場所を知ることもある。
夏の朝の嬉しいサプライズだ。

バラのアーチの下でひっそりと咲いていた、
ワスレナグサの親戚の女の子
「あなた、お名前は?」

マルタゴンリリーに魅せられて以来、我が家の庭にさまざまなユリ子さんが増えた。
聖母マリアゆかりのマドンナリリー、
細い葉に緋色の小さな花が連なって咲くイトハユリ、
下向きに咲くオレンジ色のカナデンセ・・・etc.
10数種に及ぶ原種系のユリは、夏の暑さにもめげず、
毎年花を開く。
オニユリによく似たこのユリは名札が落ちていたので、
私はひそかに「オニババユリ」とよんでいる。
色が黒く何となく意地悪そうな感じが、オニババァのイメージのような気がして。

蚊にさされながらなんとか水やりを終えた。
さぁ、これから朝ごはんだ。
冷たいジュースは、何にしようか。
出来ますものは、
エルダーフラワー (ニワトコの花)、 マルベリー (クワの実)、 アカジソ の3種類だが、
全部この庭から生まれた手作りの飲み物。
どのジュースも夏の季節を感じさせてくれる。
あぁ、いい風が吹いてきた