Sketch of Sweden 6 夏至祭・緑の柱を立ち上げる


事務所の前には、水揚げが済んでいる草花がたくさん置いてあった。
紫のグラデーションの花穂がロマンチックなルピナス、
清らかな村娘を思わせるフランス菊、
「聖母の外套」と呼ばれる黄緑色のアルケミラ・ブルガリス、
小さなピンクのポンポンが愛らしいアカツメクサ、
黄色の小花をたくさんつけたリシマキア・・・etc.
どの花も道端や空き地、森や林の入口などから摘んできたものだという。

この花を数種類組み合わせて、小さな花束を作るのが次の仕事だった。
緑の柱に取り付けるための花束だが、初めての人にはむずかしいらしい。
花束作りはお手の物。
私の最も得意とする技なので、手早く器用に花束を作る私の周りには、
いつの間にか教えてほしい若い人たちが集まり、
ちょっとしたレッスンのようだった。
不思議な事に気がついた。
来た時に乗っていた私の車椅子は、まるで使っていないため、
誰かがどこかへ片付けてくれたらしい。
思い返してみると、最初に白樺の葉で小束をを作ったあたりから、
杖も使わずに、一人で歩き始めていたようだ。
集中して、心楽しく仕事をすれば、体の不調も忘れてしまう・・・。
まさに「精神は肉体を凌駕する」という金言そのものではないだろうか。

若い男性の目は、野の花をアレンジ中の娘さんの胸もとににくぎ付け!!!
夏至祭は、昔からこういった出会いによって、ロマンスが生まれるときでもあった。

隣のグループでは、柱の上部に飾る大きな花輪を制作中だ。
自転車のホイールに似た円形の金属に、大胆な色遣いで花束を止め付けているのは、
一番目立つ場所に使うからだという。
果たしてどんな場所に、どんなふうに使うのだろうか。
わくわくしてきた。

いよいよ総仕上げの時が来た。
柱の長さはどのぐらいあるだろうか。
非常に重たいので、男性軍総出の大仕事だ。
建てる前に、柱の上部に横板を渡して十字架の形にし、
最頂部から白樺の小枝で作った例の緑のロープを垂らして・・・・。
もちろん、柱も緑のロープでぐるぐる巻きにして緑色に仕上げるのだ。

完成!!!
芝生の広場へ見事に立てた、メイポールをとくとご覧あれ!
青空をバックに、堂々と立っている力強い姿にしばし感激してしまった。
あら、横板の両端に下がっている大きなイヤリングのような花の輪は、
自転車のホイール(?)につけたアレだわ。
何とかわいらしいこと・・・。
午後からこの広場では、夏至祭りが開催される。
一旦、園子さんの家で昼食をいただき、もう一度出直すことにしよう。
さて、どんなお祭りなのだろう。
考えただけでも、気持ちが高ぶって楽しみでならない。
(つづく)