レトロな化粧品

「一瓶つけたら鏡をごらん、色白くなる X X クリーム」
肝心の商品名を忘れてしまったが、このキャッチフレーズを覚えている方はいないだろうか。
私が中学生の頃だから、昭和30年前後の婦人雑誌の広告に思い当たる方は、
おそらく私と同世代だにちがいない。
第二次世界大戦が始まって1週間後に生まれた私は、うろ覚えながら終戦の頃やその後の復活の道のりを
体験してきている。
よく衣・食・住というが、戦後の耐乏生活を強いられていた頃は食・住・衣の順で、
着るもののおしゃれはもちろん、化粧などは二の次だった。
化粧と言えば、今でも鮮明に覚えているシーンがある。
縁側に面した明るい場所で、手鏡を見ながら炭になったマッチの先端で眉毛を描いていた母、
もうほとんど残っていない口紅を小指の先でのばしている母・・・。
ふだんは素顔ったが、あれはPTAや結婚式などだったのだろうか。
先日、近所のホ-ムセンターで、レトロな品が並んでるコーナーを見つけた。。
ジュジュ化粧品,ウテナクリ-ム、ヘチマコロン、ユゼ黒砂糖石鹸・・・。
半世紀以上もタイムyスリップした世界が、そこにはあった。
若い人たちには何のことか通じないだろうが、
私の思春期の頃に、新聞や雑誌の広告に出ていた化粧品が棚に並んでいたのだ。
あの頃の宣伝女優の小暮美千代や、美白クリームの漫画・「白子さん、黒子さん」が、
急によみがえった。
ヒアルロンサンもコラーゲンもまだ開発されていなかったあの頃、
女の人たちは米ぬかや蜂蜜、黒砂糖などの身近な材料で、ひびやあかぎれが無い手足と、
色白の美肌を希ったのだ。
思わず買ってしまったレトロな化粧品に若き日の母を思い出し、私はしばらく眺めていた。