英国・癒しの旅① 多くの親切を受けながら
私はひどい腰痛で悩んでいた。
杖を頼りになんとか足を運んでも、長くは歩けない。
杖を離すと、悲しいかな、腰が曲がって、オランウータンにそっくりの歩き方きになってしまう。
外出すると人目が気になり、みんながひそひそと噂話をして、
私をあざ笑っているように思えてならない。
「腰痛のこととは別に、これはノイローゼ気味。このままでは鬱になりかねないわよ」と、
もう一人の私が忠告をしてくれる。
たしかに自分で自分を甘やかしている部分があることは、認める。
しかし、歩けなくなっては、これからの人生に何の希望も持てないではないか。
家族のお荷物になって、迷惑をかけるだけだ。
堂々巡りをして悩んでいる私に、夫が声をかけてくれた。
「ちょっと早いが、金婚式のお祝いということにして、イギリスへ行こう。
人目もなにも気にしないで、どこまで頑張れるか試してごらん」
前回にも記したように、このような成り行きで、
車椅子と杖を持参した、癒しの旅。
同じ悩みを持つ人のためにも、こんなことあんなことを思い出しながら綴ってみよう。

6月18日。長男が車で送ってくれ、5時に羽田へ到着。
こんなに早い時間なのに、搭乗手続きを待つ人が意外に多い。
BA(British Airways)のカウンターへ向かうと、
「広田様、お待ちしていました」と女性職員が笑顔で現れ、
つきっきりで登場手続きや荷物の預け入れをしてくれた。
次には、車椅子の介助を専門とする男性職員と代わり、
見事な連係プレイでこまごまとした関所をクリアし、
バスの乗り場まで付き添ってくれた。
リフトに乗るのもバスに乗るのも最優先なので、
慣れていない私は、ほかの人に申し訳ない気持ちになったほどである。
機内でも乗務員から優しくしてもらったが、大げさな親切ぶりでなく、
いつも眼くばりをしてくれているのがスマートだと思った。
12時間でヒースロー空港に到着。
待っていてくれた世話係の職員のおかげで、出国手続きも難なく済み、
レンタカーの連絡バスの乗り場まで付き添ってくれた。
出迎えてくれた友人のフォガティ夫人(オペラ研究家)によると、
イギリスではこのぐらいの親切は、あたりまえのことだという。

ボルボの大型車を借りて、
まずは田園風景が美しいことで定評があるサリー州の、 Longshott manor hotelへ。
深い緑の森の中にあるため、最初は入口が見つからなかったのも道理、
ここは隠れ家のような Boutique hotel(こじんまりとしたおしゃれなホテル)なのだ。

16世紀の荘園領主の館をホテルにしたもので、壁面の煉瓦の使い方や古い塔、
濠などに歴史の流れが感じられる。
16世紀のイギリスといえば、6人の妃と結婚したヘンリー8世の御代だ。
私達の部屋は、女官から王妃となった Jane Seymour の間、
右隣は 最後の王妃となったCatherine Parr の名札が古い扉についていた。
館を取り囲むようにt作られた花壇は、いくつあったろうか。


私が感心したのはブナの木で作りつつある、「淑女のため散歩道」だった。
その昔、身分の高い家に生を受けた令嬢は、色白の美肌が必須条件であったという。
しかしある程度のエクササイズも必要なので、
日傘につばの広い帽子、ハイカラーの上着、肘までの長い手袋といった完全武装で、
このように日影が出来る緑のトンネルを往復しては、散歩を楽しんだそうな。

このホテルには2階もある。
しかし、私が階段の上り下に苦労することを案じて、
1階に部屋を用意していたという。
多くの親切を受けながら、イギリスで癒しの旅はこうして始まった。
杖を頼りになんとか足を運んでも、長くは歩けない。
杖を離すと、悲しいかな、腰が曲がって、オランウータンにそっくりの歩き方きになってしまう。
外出すると人目が気になり、みんながひそひそと噂話をして、
私をあざ笑っているように思えてならない。
「腰痛のこととは別に、これはノイローゼ気味。このままでは鬱になりかねないわよ」と、
もう一人の私が忠告をしてくれる。
たしかに自分で自分を甘やかしている部分があることは、認める。
しかし、歩けなくなっては、これからの人生に何の希望も持てないではないか。
家族のお荷物になって、迷惑をかけるだけだ。
堂々巡りをして悩んでいる私に、夫が声をかけてくれた。
「ちょっと早いが、金婚式のお祝いということにして、イギリスへ行こう。
人目もなにも気にしないで、どこまで頑張れるか試してごらん」
前回にも記したように、このような成り行きで、
車椅子と杖を持参した、癒しの旅。
同じ悩みを持つ人のためにも、こんなことあんなことを思い出しながら綴ってみよう。

6月18日。長男が車で送ってくれ、5時に羽田へ到着。
こんなに早い時間なのに、搭乗手続きを待つ人が意外に多い。
BA(British Airways)のカウンターへ向かうと、
「広田様、お待ちしていました」と女性職員が笑顔で現れ、
つきっきりで登場手続きや荷物の預け入れをしてくれた。
次には、車椅子の介助を専門とする男性職員と代わり、
見事な連係プレイでこまごまとした関所をクリアし、
バスの乗り場まで付き添ってくれた。
リフトに乗るのもバスに乗るのも最優先なので、
慣れていない私は、ほかの人に申し訳ない気持ちになったほどである。
機内でも乗務員から優しくしてもらったが、大げさな親切ぶりでなく、
いつも眼くばりをしてくれているのがスマートだと思った。
12時間でヒースロー空港に到着。
待っていてくれた世話係の職員のおかげで、出国手続きも難なく済み、
レンタカーの連絡バスの乗り場まで付き添ってくれた。
出迎えてくれた友人のフォガティ夫人(オペラ研究家)によると、
イギリスではこのぐらいの親切は、あたりまえのことだという。

ボルボの大型車を借りて、
まずは田園風景が美しいことで定評があるサリー州の、 Longshott manor hotelへ。
深い緑の森の中にあるため、最初は入口が見つからなかったのも道理、
ここは隠れ家のような Boutique hotel(こじんまりとしたおしゃれなホテル)なのだ。

16世紀の荘園領主の館をホテルにしたもので、壁面の煉瓦の使い方や古い塔、
濠などに歴史の流れが感じられる。
16世紀のイギリスといえば、6人の妃と結婚したヘンリー8世の御代だ。
私達の部屋は、女官から王妃となった Jane Seymour の間、
右隣は 最後の王妃となったCatherine Parr の名札が古い扉についていた。
館を取り囲むようにt作られた花壇は、いくつあったろうか。


私が感心したのはブナの木で作りつつある、「淑女のため散歩道」だった。
その昔、身分の高い家に生を受けた令嬢は、色白の美肌が必須条件であったという。
しかしある程度のエクササイズも必要なので、
日傘につばの広い帽子、ハイカラーの上着、肘までの長い手袋といった完全武装で、
このように日影が出来る緑のトンネルを往復しては、散歩を楽しんだそうな。

このホテルには2階もある。
しかし、私が階段の上り下に苦労することを案じて、
1階に部屋を用意していたという。
多くの親切を受けながら、イギリスで癒しの旅はこうして始まった。