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蕗子さん、お元気ですか

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天窓を激しく打つ雨音で目が覚めた。

時計を見ると4時を少し回っている。

起きるには早すぎる。

もう一度眠ろうと、羽毛布団を肩まで引き上げたとたん、

ブーツの湿気を取るために、庭に2足も出しっぱなしだったことを思い出した。

飛び起きて、ぼんやりと明るい庭からびしょ濡れのブーツを持ってきたものの、

目が冴えて眠れそうにない。

いつの間にか、昨日の庭掃除のときに見つけた春の印が頭の中に浮かんできた。


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西洋菩提樹の根元を囲んでいるのは、エメラルド色の芽を出したばかりのブルーベルだ。

その後ろにフキノトウが、みずみずしい黄緑色の晴れ着でで微笑んでいる。

スーパーでは正月の頃から温室栽培のフキノトウをパック入りで売っていたものの、、

こうして自然の中で育ったものとは、香りも味もだいぶ違う。


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「クサカンムリに道路の路と書いて、フキと読むのよ。

雪の中から顔をのぞかせるフキノトウのように、強い意思を持った女性になるようにと、

父がつけてくれた名前なの」

知人の家に同居していた少女は、はにかみながら名前の由来を語ってくれた。

しかし、複雑な家庭環境で育つにつれて彼女の悩みも多く、何度か相談を受けたことがある。

その後、私が結婚して子育てに追われてあわただしい日を送ることになり、

いつの間にか疎遠になってしまった。


たった一度だけ、フキノトウの季節に、電話をしてきたことがあった。

思いつめたような声が気にかかり、彼女の消息を友人や知人に問い合わせてみたが、

誰も知らないという。


また、今年もフキノトウの季節になった。

蕗子さん、お元気ですか。

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