気がつけば多肉ランド

ゆるやかな坂道を降りてくると、
隣家との境界を、コンクリートのプランターボックスで仕切った家がある。
入口に近いところに、何やらごちゃごちゃと並べてあるのは何だろう。

近づいてよく見ると、多肉食物が並んでいる。
じつは、ここは私の家で、
いつの間にかこのコーナーを「多肉ランド」とよぶようになった。
夫からは[貧乏くさい」という理由から、撤去命令が出ているし、
私自身も[多肉]という言葉が何となくいやらしく思えて、
玄関先に置くのが恥ずかしい気もしている。

捨てられないのにはこんなわけがある。
私がスランプに陥っていたとき、いや、軽い鬱だったかもしれない。
主婦であり、テレビや講演、執筆などで超多忙の毎日だった頃、
疲労のために体調がすぐれない時は、
元気なハーブや草花を見るのがなぜか辛くてたまらなかった。
考えてみると、これまでこちらがリードしてきた植物との間柄が、
逆転するのが、怖かったのかもしれない。
そんなとき気楽に付き合えたのが、物言わぬこの多肉たちだった。
丈夫なうえに水はいらないから、世話を手抜きした罪悪感がない。
生長が遅いだけでなく表情に変化が乏しいので、こちらが優位に立てる・・・。
落ち込んだ時は、花や緑からの脅迫観念を受けることがあるのだ。
今では、笑い話になってしまったが、
これも園芸療法の成果ではないだろうか。
話は変わるが、背景の擁癖に写っているのが、
先日紹介した「がんばろーズマリー」だ。
丈夫で耐暑性、耐寒性のあるこのローズマリーを挿し木で増やし、
被災地へ送ろうという話に、賛同してくださった方もおり、
仲間が増えたことに感謝している。