弟からの手紙

福島市の弟から、今年も甘くて美味しいサクランボが届いた。
姉想いの弟は、姉たちが自分で買ってはなかなか食べられないふる里の味を、
旬の季節に送ってくれる。
「あら、手紙が・・・」
輝く宝石のようなサクランボに添えられた一通の手紙。
それは原発による風評被害で悩み、自殺者まで出した福島人の気持ちを代弁していた。
その一部を、書き写してみよう。

福島の初夏をお届けいたします
ー風評に流されず福島を応援してくださいー
連日福島の第一原発事故のニュースが発信されますと、
国民のすべてが福島 イコ-ル ”放射能” ”おそろしい場所 ”を連想するようになってしまいました。
福島県民は誰一人として悪いことはせず、真面目に真剣に毎日を過ごしていますが、
洗脳されてしまった他の人たちは、福島への観光を取り止め、福島産と書かれたものを買い控えています。
それどころではありません。福島県人は汚い、近づくと伝染するなど、恐ろしい発想で人種差別までおこなってい
るのが、現実です。
国や東電によって起こされた許すことのできない大人災事故なのに、
何故私たちが風評のために苦しまなくてはならないのか。まさに不条理そのものです。
風評にも負けず、頑張っています。どうか安心してください。
さて、ご存知のように、福島はサクランボ、モモ、ナシ、ブドウ、リンゴ、カキなど、果物の名産地として知られ
ています。このような最悪の状況にあっても、農家の人たちは自慢の作物を丹精込めて作ってきました。
このなかでも、ちょうど”赤い宝石・サクランボ ”が収穫期を迎えましたので、お届けしたいと思います。
1年をかけて愛情いっぱいに育てられた、安心できるサクランボです。
どうか食物の命を殺すことなく食していただければ幸いです。(後略)
円通時住職 吉岡棟憲
弟の悔しさは、痛いほどわかる。
事故が起きてから100日以上もたったのに、政治家たちは自分のこと、党派のことばかりを考えていて、
一向に事が進まない。後手後手に回る対処策は、危険極まりなく、今や福島だけの問題ではなくなっている。
ふるさとから届いたサクランボが甘くて美味なため、
気持ちはなおさら複雑である。