マートルのウエデイングブーケ

「お母さん、夜になるといい匂いがするんだけど、何の花だろう」
隣に住む長男が自分の庭で実ったアンズを届けに来てくれた。
「ありがとう。美味しそうなアンズね。花の匂いが素敵でしょう?
ほら、バラのアーチの突き当たりのところにあるマートルガ咲き始めたのよ。

アーチの中に見える面白い形の幹がマ-トル。3月下旬の庭。

5月21日。
花盛りのつる性コウシンバラとコーネリア。マートルがフォーカルポイントになっている。

和名の銀梅花と書けばいかにも日本的だが、この花は地中海沿岸地方が原産地だ。
私は6月末に、プロヴァンスの山中でブッシュ状に育っているのを見たことがある。
ゲッケイジュに似た香りの葉と濃い紫色の小さな実を、ワイルドな肉料理に使うハーブとして知られるが、
ユダヤ教のホリーツリーであることを知っている人は意外に少ない。
それよりも、ウェデイングブーケの原型はこの花を束ねたものだったという。
愛らしいまん丸のつぼみが無数に付き、純白の清らかな花が次々と咲いていくことから、
豊饒のシンボルとして、花嫁が手にする花となった。
その後、同様の意味合いからオレンジの花が使われ、今ではフリースタイルとなっている。
ところで、先般行われた英国のロイヤルウエデイングでは、ケイト妃が手にするブーケが注目を浴びた。
残念なことに、私は何度かテレビ前の席を立ったので確認が出来なかったけれど、
フラワーデザイン関係の方が「やはりマートルだったわ」と教えてくれた。
そうか、やっぱりねえ。でもこの花をブーケにする場合は一つだけ欠点がある。
それは散りやすいこと。
細い糸のような蕊、5弁の薄い花弁があっという間に散ってしまうのだ。
もしかしたら、ダミーをいくつか作って途中で取り換えているかもしれない。
今度ビデオを見るときは、この点に注目しよう。