32年前の鮎料理 1
最近、夫の撮影に同行し、長野県上田市に行ったときのことだ。
信州と聞けば涼しいイメージがあるが、そうとは限らない。
じりじりと肌を焼く強い日差しのなかで、撮影が一段落した。
時計を見ると、ちょうど正午だ。
早朝に出発したので、おなかはぺこぺこ。
さぁ、どこで何を食べようか・・・・・。
「ね、この上田だったと思うんだけど、
子供たちがまだ小さかった頃、河原に建てた鮎料理の小屋へ行ったことがあったわね。
あそこはまだあるかしら」
「また、ずいぶん昔のことを思い出したものだな。よし行ってみよう」

探すのは簡単だった。
千曲川の土手に建てられた仮設の小屋は、以前の小屋の3倍はありそうな広さだった。、
どうやら、8月5日に行われる花火大会の連絡会議を始めるところらしく、
地元の客がどんどん増えて行く。

「1品料理よりもコースで頼んだほうがお得ですよ」
店長のアドヴァイス通り、一番低額なコースで頼んでみた。
突き出しの小鮎の甘露煮に続いて、「鮎の刺身」
見ただけでも包丁の冴えと、清冽な流れで育った身の引き締まり具合がわかる。
口に入れれば、コリコリっとした歯ごたえと、かすかな甘みを感じた。

鮎を釣るにはおとりを使い、川をせき止めて簗場を作る漁法があることは知っていた。
ここも同じかと思ったら、「つけ場漁」という徳川時代から続く伝統の珍しい漁法で、
今では群馬県と長野県の数か所にしか残っていないという。
客へ漁法の説明をする店長は、きびきびとよく体を動かす青年だ。
鮎を獲るばかりでなく、自ら料理をし、客への目配り心配りを欠かさない。
あのときの店長に、よく似ている。

「鮎の塩焼き」踊り串、塩加減 火加減・・・・。
シンプルな調理法だけに難しい。
気になっていたことについて、聞いてみた。
「じつは32年前に、ここで家族と食事をしたことがあるんです。
店長さんにとても親切にしていただいたんですけど、あの方はあなたのお父さん?」
(続く)
信州と聞けば涼しいイメージがあるが、そうとは限らない。
じりじりと肌を焼く強い日差しのなかで、撮影が一段落した。
時計を見ると、ちょうど正午だ。
早朝に出発したので、おなかはぺこぺこ。
さぁ、どこで何を食べようか・・・・・。
「ね、この上田だったと思うんだけど、
子供たちがまだ小さかった頃、河原に建てた鮎料理の小屋へ行ったことがあったわね。
あそこはまだあるかしら」
「また、ずいぶん昔のことを思い出したものだな。よし行ってみよう」

探すのは簡単だった。
千曲川の土手に建てられた仮設の小屋は、以前の小屋の3倍はありそうな広さだった。、
どうやら、8月5日に行われる花火大会の連絡会議を始めるところらしく、
地元の客がどんどん増えて行く。

「1品料理よりもコースで頼んだほうがお得ですよ」
店長のアドヴァイス通り、一番低額なコースで頼んでみた。
突き出しの小鮎の甘露煮に続いて、「鮎の刺身」
見ただけでも包丁の冴えと、清冽な流れで育った身の引き締まり具合がわかる。
口に入れれば、コリコリっとした歯ごたえと、かすかな甘みを感じた。

鮎を釣るにはおとりを使い、川をせき止めて簗場を作る漁法があることは知っていた。
ここも同じかと思ったら、「つけ場漁」という徳川時代から続く伝統の珍しい漁法で、
今では群馬県と長野県の数か所にしか残っていないという。
客へ漁法の説明をする店長は、きびきびとよく体を動かす青年だ。
鮎を獲るばかりでなく、自ら料理をし、客への目配り心配りを欠かさない。
あのときの店長に、よく似ている。

「鮎の塩焼き」踊り串、塩加減 火加減・・・・。
シンプルな調理法だけに難しい。
気になっていたことについて、聞いてみた。
「じつは32年前に、ここで家族と食事をしたことがあるんです。
店長さんにとても親切にしていただいたんですけど、あの方はあなたのお父さん?」
(続く)