南こうせつコンサート

いつものように熱烈ファンによる「コウセツ、コウセツ」のコールで、幕が開いた。
ここはNHKホール。
「満天の星」と銘打って、6時半にスタートした「南こうせつ40周年コンサートツアー」は、
9時を過ぎてもまだ終わらなかった。いったい、何曲ぐらい歌ったのだろうか。
激しいビートに乗って、総立ちになった観客と一体になるかと思えば、
しみじみと歌いあげる愛のバラードありで、
個性豊かで緩急自在の歌と、絶妙なトークが客席とステージを結び、あっという間に9時を過ぎた。
ボタンダウンの白いシャツにジーンズ姿の彼は、とても還暦を越したようには見えない。
歌の素晴らしいのはいうまでもないが、
今回は語りの中に大事なメッセージを受け取ったような気がしのは、私だけだろうか。
「このところ、とても親しい人や先輩たちが相次いで亡くなりました。
たいそう寂しくて、ショックを受けましたが、私が毎日こうして生きていくということは、
亡くなった方に習うことにほかなりません。それが生きているという証なのです」
歌の合間に、しみじみとこのような話をしたと思うが、
私はすぐに曹洞宗の有名な経典である「修証義」を思い出した。
この「しゅしょうぎ」とは第5章からなる禅の教義書で、
最初の言葉は「生を明め死を明らむるは佛家一大事の因縁なり」とある。
「あきらめ」というのは「諦める」ことではない。明らかにするという意味だ。
すなわち、「生きるということはどういうことか、死ぬということはどういうことか。仏教を信仰する者にとって、これは避けて通ることのできない、一番大事な目的意識である」
そうだ、こうせつさんは私と同じ曹洞宗の寺に生まれている。
きっと修証義を読んでいるので、こういった考えになったと思われる。

コンサートが終わると、広尾にあるイタリアンレストランで打ち上げのパーティーへ。


ステージを終えたプレイヤー、スタッフ、関係者などが次々に集まり、
御馳走を前にグラスを揚げて「乾杯」
「お疲れ様」「よかった、よかった」の声が飛び交うこの雰囲気がたまらなく好きだ。
ハーブがきっかけで友達になった南こうせつさん、
どうか、今年もたくさんの素晴らしいことがありますように。