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伊豆稲取の吊るし雛

吊るし雛を初めて見たのは、伊豆の大沢温泉だった。
甲州武田勝頼の重臣・依田一族が居を構えた館が、今はホテルになっており、
太い梁や天井の木組みが見事な薄暗い空間に
絹の古布で作った愛らしい飾り物が、かすかに揺れていた。

あの時、吊るし雛が稲取地方独特の節句のお祝いだということを知ったのが、
今回の妹たちとの旅の目的となった。

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伊豆稲取は海に面した温泉のある穏やかな町だ。

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雛祭りも間近なこの時期は、町内の数箇所に吊るし雛の展示所が設けられている。
まずは海辺の「なぶらとと」という小さな建物へ。
入り口を入るなり、極彩色の万華鏡の中に入ってしまったような錯覚にとらわれてしまった。
段飾りのお雛様を囲むように、部屋の天井から数え切れないほどの赤い糸で繋げた小物が、
下がっているではないか。
よく見ると、すべて丹念に手作りされた飾り物で、赤い紐で巻いた丸い輪から吊り下げられている。
感じのよい係員の方の説明によると、この吊るし雛の風習は江戸末期にこの稲取地区で始まり、
お雛様を買うゆとりのない家では、余り布でさまざまな縁起物を作って、初節句を祝ったという。

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こちらは「むかい庵」。観光バスの駐車場がある立派な建物だ。
中には数個所のコーナーが設けられ、
それぞれ**家に伝わる雛飾りと吊るし雛を組み合わせた展示になっている。
生まれてくる子や孫のために、母や祖母が作った飾り物には、
幸せを祈るこんな気持ちもこめられていた。
たとえば猿は、苦しみや悲しいことが去るように。綿を入れた三角の物は薬を包んだ形、
桃は邪気をはらい幸せを呼ぶという。この3種類だけあれば、子はすくすくと育ってくれるもの。
なるほど、たしかに猿、三角、桃はかなりの数になる。

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一つ一つ見ていくと、判じ物のようなものもある。
やや左下にある空色のものはどう見てもセミに似ているのだが、
どんな願いが込められているのだろうか。
フクロウは福や不苦労、花は花のようにかわいらしく、
草履は足が丈夫になりますように、と親の願いが込められている。

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おかめさん、あるいはお多福があった。これは福を多く招く縁起物。
唐辛子は虫除けの効果があることから、娘に虫がつかないようにという意味。
枕は寝る子は育つを表している。

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這い這いをする赤ちゃん。二人とも、フリルつきの立派なよだれかけをしている。
このよだれかけは、恐ろしい疱瘡よけとのこと。
黒い髪の子は、絞りの高価な布で、首の周りを派手に巻いている。
お多福風邪にならないようにというためだろうか。

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昭和のお雛様とお人形たち。
当時としてはモダーンな、チューリップ模様のティーセットを誕生祝にもらったのでは?

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長崎の松浦家のお姫様が、興しいれのときに持ってこられた上等なお雛様。
確か、そうだったように記憶しているが、違っているかもしれない。
何しろ、押すな押すなの盛況で、ゆっくりと見られないコーナーもあったからだ。

この雛の吊るし飾りは、長らく忘れかけていた古きよき風習を婦人会の方たちが、
10数年前に復元させたもので、今では中学校の授業の一環としてもで受け継いでいるという。

春風の吹く伊豆の小さな町で、
母から娘へ、娘から孫へと伝わるとてもいいものを見せてもらった。
私たち姉妹は、幸せな気持ちで何度も微笑みあった。

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