貝殻にサキュラント

「ねぇ、この多肉の可愛い飾り、どうしたの?
ふーん、アワビの貝殻に植えてあるのね。
こんなふうなうなガラスの皿にのせると、涼しげで、素敵!!!
私も欲しくなっちゃった。ねぇ、どこで売ってるの?」
テーブルの上の小さな緑を指さしながら、
買い物の途中に立ち寄ってくれた友人のよくしゃべること・・・・。
彼女にはこの手作りが、よほど気に入ったとみえる。
「どこにも売ってないわよ。だって、私が昨日の午後に作ったんですもの」
「本当? でも、難しそうだし、材料を揃えるのが大変じゃない?」
「フフフ、簡単、簡単。それよりとっても面白くてよ」


玄関脇のコンクリートの壁の上に、
いわゆる多肉植物で植え込みを作ったのは、10年ほど前のことだった。
それまでは季節の草花を植えたプランターを置いていたが、
乾きやすい場所のため水やりが大変な上に、植え替えも欠かせない。
そこで、SUCCULENTS(サキュレント)の植え込みを作ってみたら、大正解。
植え初めの時は材料費が少しはかかったが、
草花と比較したらひじょうに格安で、
よそにはないユニークなデザインも楽しめるし、
何よりも、ノーメンテナンスが気に入っている。
猛暑が去ったら、このコーナーをリニューアルする予定なので、
雑然としたままでいたが、
今まで植えていたものを整理している内に、
ばらばらになった葉や茎を捨てるにはもったいなくて、
このミニミニガーデンを思いついたのだった。
ところで、英語のサキュラントとは、
サボテンのように肉厚な葉や茎、花弁などに、
水分を多く蓄えておける植物を意味する言葉だ。
日本では、「多肉と」訳しているが、
私には何だかとても恥ずかしくて、口にできない。
というわけで気障なようでも、サキュラントとよんでいる。

これは、家にあったもので作った卓上オーナメント。
簡単にできるので、作り方のヒントを記してみよう。
サキュレントを集める。
園芸店や100円ショップなどをのぞいたり、友人から分けてもらうなどして。
とにかくほんの少しずつしか使わないので、おおげさに準備することもないが、
色や形、大きさ、質感、などなるべく変化に富んだ葉を集めるのが、こつだ。。
用土は赤玉土の小粒が適しているが、乾いた粒状の庭土でもよい。
気をつけたい点は、肥料を混ぜないこと。
育ち過ぎると形が乱れ、せっかくのミニの魅力がなくなるからだ。

容器に土を少し入れ、
まずアクセントになる大きめな株や葉先を置き合わせてみる。
色や形、ボリュームなどを考えて、デザインが決まったら、
それぞれの植物の端を土に少し埋めるか、少し土をかぶせる。
要は、土に触れたところから発根するためで、細い枝なら挿してもよい。
次は空いているスペースに、小さな個体を丁寧に植えこんでいく。
この時間が、一番楽しい。
これでできあがりだ。

容器はアイデア次第。
貝殻はもちろん、小皿、小さな瓶、瓶のふた、小鉢やブリキの箱も
面白い雰囲気になると思う。
置き場所は明るい室内がベストだが、根付いてからなら窓辺でも平気だ。
水やりは、必要なし。

これは何でしょう?
貝殻の底がガタつくので、
凹凸に合わせて平らになるように作った敷き台。
段ボールを張り合わせ、
海の色のイメージの紙を張って作ってみた。
見かけは良くないが重宝している。
猛暑の庭に吹く風

私は、なんと勝手気ままなのだろう。
毎日毎日降り続く梅雨の間は、腐りかけ溶けてしまいそうな花や茎を眺めながら、
「雨はもうたくさん! 1時間でもいいから晴れ間がほしい」と本気で願っていた。
けれども、連日のように猛暑が続くと、今度は庭の草花が枯れないように雨が降ってほしいと、
天の神様に手を合わせるのだから、我ながらいい加減だと思う。
水やりは、朝が勝負だ。
4時半には、もう目覚めているから、私は早起き鳥の仲間かもしれない。
庭へ続く大きなガラス戸を開けると、
夜の間咲いていたジャスミンの残り香が、まだかすかに漂っている。
朝日を浴びて咲いているのは、オニユリとバラとサルビア・グラニチカ・・・・・。

日中に比べて、朝は涼風が吹くことが多い。
木の葉伝いに、かすかな音を立てて風が渡ってくることもあれば、
突然目の前の花が揺れて、風の居場所を知ることもある。
夏の朝の嬉しいサプライズだ。

バラのアーチの下でひっそりと咲いていた、
ワスレナグサの親戚の女の子
「あなた、お名前は?」

マルタゴンリリーに魅せられて以来、我が家の庭にさまざまなユリ子さんが増えた。
聖母マリアゆかりのマドンナリリー、
細い葉に緋色の小さな花が連なって咲くイトハユリ、
下向きに咲くオレンジ色のカナデンセ・・・etc.
10数種に及ぶ原種系のユリは、夏の暑さにもめげず、
毎年花を開く。
オニユリによく似たこのユリは名札が落ちていたので、
私はひそかに「オニババユリ」とよんでいる。
色が黒く何となく意地悪そうな感じが、オニババァのイメージのような気がして。

蚊にさされながらなんとか水やりを終えた。
さぁ、これから朝ごはんだ。
冷たいジュースは、何にしようか。
出来ますものは、
エルダーフラワー (ニワトコの花)、 マルベリー (クワの実)、 アカジソ の3種類だが、
全部この庭から生まれた手作りの飲み物。
どのジュースも夏の季節を感じさせてくれる。
あぁ、いい風が吹いてきた