暁の光がそのまま花弁に転写されたようなバラが、朝の風に揺れている。
ティの香りを持つこのレディ・ヒリンドンは、
「金華山」の和名でも、ローズ・ファンたちに長い間親しまれてきた。





庭にはすでに、一晩中香っていたスイカズラの甘美な香りと、
ポメロにレモン、カラマンシ―など柑橘系の芳香がただよっていて、
これだけでもうっとりとなってしまう。、
そのうえ、
朝日とともにレディ・ヒリンドンのティのノートがプラスされるのだから、
最高のぜいたくとでもいおうか、
目には見えない幸せのオーラに包まれたような時間が過ぎてゆく。。






太陽が昇るにつれて、
アプリコットイエローの花びらはひそやかにほぐれ、
太陽神アポロンにキスを返す。




小鳥たちのコーラスがひときわ賑やかになって、
夜は明けた。
早起きが大好きな私は、毎朝5時には庭に出て作業をしている。

朝露が光る若葉に見とれ､風のそよぎに耳を澄ましていると、
身も心も清められるようだ。





ここは私の秘密の花園。
そして、私のサンクチュアリ。

年を重ね、体が不自由になっても、
打ち込めるものがあって、本当によかった。
誰に見せるでもなく、自分自身のための心の花園に、
どうかいつまでも美しい花を咲かせられるように・・・・・。




「今日も靚子奥さんは、ごきげんで庭いじりを始めたわ。
私も庭番を無事務めることが出来てよかったニャー。
それではこれからひと寝入りしましょ」

「Marico　チャン、おつかれさま」

東の空が明るくなった朝の４時、
小鳥たちは、もう歌い始めている。

レースのカーテンのような　「モッコウバラ」　の香りに包まれて、
庭のガーディアンの　Ｍａｒｉｃｏ　は、
責任者らしい顔つきで庭のチェックを始めるところだ。

テーブルには、早起きさんが飲んだコーヒーのマグカップが・・・・・。




一条の光が射して、レースの生地は美しい花模様に。





ティアラのように咲き誇るバラは、ムスクの香りが強い　「コーネリア」。
おしゃべりな花たちの笑い声が、聞こえてくるようだ。




ア―チを見上げると、逆光になった絵模様が、
まるで　ウイリアム・モリス　のデザインによる壁紙にそっくり・・・。




日本で自家実生したガリカ系の「紫玉」。
花色の変化ははっきりとしていて、濃いモモ色からパープルの勝った赤紫色へ。
花の形もよくあるタイプからうろこ状のポンポン咲きへ、見事な変化を遂げる。
紫玉で作った垣根だが、
右端に写っている　「ブラムリー（英国生まれのクッキングアップル）」　が、大きくなる前に、
移植する予定だ。




南仏で求めた種子から育てた、四季咲き性の　「ミモザ」。
擁壁の上に植えたので、下の道路を行く人々は、
やさしい花の芳香がどこから来るのか知りたくて、足を止める。
つい昨日聞いて話によると、
見上げたミモザにちょうど朝日が当たり、
後光が射したみたいだったとか・・・・。

朝の光には、一日の幸せが込められているという。
次回は「朝日のごとくさわやかに」のタイトルで、
Ｓｅe you ｓｏｏｎ！