S of S 7 スエーデンのアイは順調なり
(7月27日に記した)アグネータさんと種まきをしたアイのことが、気になっていた。
園子さんの話では、順調に育っているというが、
教えてきたように定植を済ませただろうか。
東南アジア原産のアイは高温多湿の環境が大好きで、半日陰や湿り気のあるところが定植の適地だ。
反対に乾燥した場所に植えたら、毎日の水やりは欠かせない。
水の切れたアイの葉はチリチリに縮んで、実に悲惨な有様になってしまうのだ。
遠く離れた日本で心配していたら、
滞在中に2度ほどお会いした近所に住むカヨさんから、嬉しいメールと写真が届いた。
アグネータさんは彼女を、
「カヨさんは私に日本語のアイウエオとガーデニングを教えてくれた
親切な neighbor(隣人)よ」と紹介してくれたが、ほんとうによく気がきく人だ。
アグネータ夫妻は大事な要件で長く出かけていることを知り、
彼女が写真を撮って送信してくれたのだった。

「まぁ、こんなに大きくなって・・・」
まるでわが子の成長した写真を見る思いだ。
きっとパールさんが耕してくれたのだろう。
芝生を剥がして、小さいアイの畑が写っている。
ふつう、灰色のこうした細かい土は水はけが悪くて根腐れしやすいのだが、
保水性があるので、かえってアイには適していたようだ。

よく見ると、茎もしっかりとしているし、葉の展開も想像以上だ。
やや密埴気味のようだが、この国では蒸れの心配がないと思われるから大丈夫。
むしろ倒れないように支えあい、倒れないで育つのに都合がよいばかりか、
夜間に温度が下がっても、ダメージを受けにくいのではないだろうか。
この調子で育ってくれれば、
アグネータさんがアイの生葉染めを楽しめる日もそう遠くはない。
園子さんの話では、順調に育っているというが、
教えてきたように定植を済ませただろうか。
東南アジア原産のアイは高温多湿の環境が大好きで、半日陰や湿り気のあるところが定植の適地だ。
反対に乾燥した場所に植えたら、毎日の水やりは欠かせない。
水の切れたアイの葉はチリチリに縮んで、実に悲惨な有様になってしまうのだ。
遠く離れた日本で心配していたら、
滞在中に2度ほどお会いした近所に住むカヨさんから、嬉しいメールと写真が届いた。
アグネータさんは彼女を、
「カヨさんは私に日本語のアイウエオとガーデニングを教えてくれた
親切な neighbor(隣人)よ」と紹介してくれたが、ほんとうによく気がきく人だ。
アグネータ夫妻は大事な要件で長く出かけていることを知り、
彼女が写真を撮って送信してくれたのだった。

「まぁ、こんなに大きくなって・・・」
まるでわが子の成長した写真を見る思いだ。
きっとパールさんが耕してくれたのだろう。
芝生を剥がして、小さいアイの畑が写っている。
ふつう、灰色のこうした細かい土は水はけが悪くて根腐れしやすいのだが、
保水性があるので、かえってアイには適していたようだ。

よく見ると、茎もしっかりとしているし、葉の展開も想像以上だ。
やや密埴気味のようだが、この国では蒸れの心配がないと思われるから大丈夫。
むしろ倒れないように支えあい、倒れないで育つのに都合がよいばかりか、
夜間に温度が下がっても、ダメージを受けにくいのではないだろうか。
この調子で育ってくれれば、
アグネータさんがアイの生葉染めを楽しめる日もそう遠くはない。
Sketch of Sweden 6 夏至祭・緑の柱を立ち上げる


事務所の前には、水揚げが済んでいる草花がたくさん置いてあった。
紫のグラデーションの花穂がロマンチックなルピナス、
清らかな村娘を思わせるフランス菊、
「聖母の外套」と呼ばれる黄緑色のアルケミラ・ブルガリス、
小さなピンクのポンポンが愛らしいアカツメクサ、
黄色の小花をたくさんつけたリシマキア・・・etc.
どの花も道端や空き地、森や林の入口などから摘んできたものだという。

この花を数種類組み合わせて、小さな花束を作るのが次の仕事だった。
緑の柱に取り付けるための花束だが、初めての人にはむずかしいらしい。
花束作りはお手の物。
私の最も得意とする技なので、手早く器用に花束を作る私の周りには、
いつの間にか教えてほしい若い人たちが集まり、
ちょっとしたレッスンのようだった。
不思議な事に気がついた。
来た時に乗っていた私の車椅子は、まるで使っていないため、
誰かがどこかへ片付けてくれたらしい。
思い返してみると、最初に白樺の葉で小束をを作ったあたりから、
杖も使わずに、一人で歩き始めていたようだ。
集中して、心楽しく仕事をすれば、体の不調も忘れてしまう・・・。
まさに「精神は肉体を凌駕する」という金言そのものではないだろうか。

若い男性の目は、野の花をアレンジ中の娘さんの胸もとににくぎ付け!!!
夏至祭は、昔からこういった出会いによって、ロマンスが生まれるときでもあった。

隣のグループでは、柱の上部に飾る大きな花輪を制作中だ。
自転車のホイールに似た円形の金属に、大胆な色遣いで花束を止め付けているのは、
一番目立つ場所に使うからだという。
果たしてどんな場所に、どんなふうに使うのだろうか。
わくわくしてきた。

いよいよ総仕上げの時が来た。
柱の長さはどのぐらいあるだろうか。
非常に重たいので、男性軍総出の大仕事だ。
建てる前に、柱の上部に横板を渡して十字架の形にし、
最頂部から白樺の小枝で作った例の緑のロープを垂らして・・・・。
もちろん、柱も緑のロープでぐるぐる巻きにして緑色に仕上げるのだ。

完成!!!
芝生の広場へ見事に立てた、メイポールをとくとご覧あれ!
青空をバックに、堂々と立っている力強い姿にしばし感激してしまった。
あら、横板の両端に下がっている大きなイヤリングのような花の輪は、
自転車のホイール(?)につけたアレだわ。
何とかわいらしいこと・・・。
午後からこの広場では、夏至祭りが開催される。
一旦、園子さんの家で昼食をいただき、もう一度出直すことにしよう。
さて、どんなお祭りなのだろう。
考えただけでも、気持ちが高ぶって楽しみでならない。
(つづく)
Sketch of Sweden 6 夏至祭・白樺の綱を作る
今年の夏至祭り(Midsommardagen ミッドソンマルダーゲン)は、6月の21日だった。
日本で夏至といえば、朝の気象情報などで今日がその日だと知る人が多いようだ。
しかし、冬が長い北欧では昼の時間が最も長い夏至の日を待ち焦がれ、各地にお祭りが残っている。
今回の旅の大きな目的は、この夏至祭りを見ることだった。
調べてみると、有名観光地や自治体などが観光客誘致のため大々的に行っている場所がある。
こうした作られたお祭りよりは、昔ながらの素朴な祭がないものだろうか。
私は道すがら立ち寄った旅人だが、ただ見るだけでなく出来れば何らかの形で参加するとか、
お手伝いをしたいものだ。
園子さんに相談してみると、
「それなら、うちの近くにいい所ががあるわ」と、請け合ってくれた。
こちらの大学に留学し、スエーデン人と結婚して10年になる彼女は、
情報と経験による強いネットワークを持っている。
ありがたい、とばかりに夏至祭イヴの20日と当日の二日間、
園子さんの住む町・ヴェステロースのホテルを予約した。
ヴェステロースは、ストックホルムから北へ列車で1時間の都市だ。
駅前に植えられた西洋菩提樹の見事な並木が街中まで続く静かな町で、
夏至の日とその前日が祝いの休日になっているせいか、人影もまばらだ。

アグネータさんのお宅では、テレビがどこにあるかわからない。
無いことはないだろうが、テレビの音が聞こえてきたことがないし、
テレビ番組の話が会話の中に登場することもなかった。
久しぶりにホテルで見たテレビは、朝から夏至祭一色!!!
アナウンサーもコメンテーターも、祭りを象徴する花冠をかぶって大いに盛り上げている。
さぁ、今日は夏至祭りだ。

スウェーデンでは、ウォーキングやサイクリングをしている人々が多い。
野の花が風に揺れ、木の枝が木陰を作る自然の中を軽快なスタイルで走り抜ける人の表情は、
誰もが幸せそうだ。
連れていってもらった夏至祭の会場は、
園子さんのサイクリングコースとなっている小さな島の森の中にあった。、

午前10時半頃に森を抜けると、小さな建物と芝生の広場があり、数人の男性が立ち働いていた。
車に乗せてきた白樺の枝や道具類を、どこかへ運んでいるらしい。

女性のグループも働き始めていた。
”God morgon”(グロモン:スエーデン語で「お早う」の意味)
挨拶を交わしながら近寄っていくと、
園子さんがリーダーと思しき人に、私の飛び入り参加の件を話しているところだった。
「どうぞどうぞ、いいですとも。みんなと同じように作業してください。でも無理はしないでね」
日本から来たというと、驚いたことに彼女は小田急線のサガミオオノに住んでいたことがあるとか。
私の車椅子姿を気遣いつつ、励ましてくれた。
まず、私の最初の仕事は、白樺の細い幹から小枝を切り取って数本ずつまとめることだった。
しなやかな白樺の小枝は優しい感触で、手袋無しの掌に気持ちがよい。
次は、この小束をリーダーとともにワイヤーで巻き付けながら、
1本の長いロープに仕上げてゆくのだが、なかなかうまくいかないこともあった。

その理由は、小束の量が作る人によってまちまちだからだ。
大きめのゴロンとした束を渡されるとそこだけ重たくなって、伸ばした時に切れやすくなり、
反対にほっそりした束でも千切れそうになる。
どうも日本人はこういう点が気になるのだが、みんなは気にせず適当に仕上げていく。
それがうまくいくのだから、びっくり。と同時に、「これでいいのだ~」とも納得。

だんだん呼吸が合ってきたところだが、ちょっと一休み。
何しろ日差しが強いので、みんな汗みずくだ。各自紙コップに名前を書いておき、
水分の補給を怠らないようにと、お互いに注意しあっている。
こんなことでも何となく仲間になったような気がして、嬉しい。

夢中になって取り掛かっていたが、気がつくといつの間にか人数が増えている。
先ほどまでは中高年の女性が多かったのに、男性も交えた若い人たちが手伝いに駆けつけ、
ポルトガル語やフランス語などのほか、さまざまなお国ことばが聞こえ始めた。
近くにある専門学校の生徒や、夏至祭で帰省中の若者などのようだ。
隣にいたチャーミングな女性は、南米のブラジリアから友人を訪ねてきたが、
「初めての経験ばかりで、もう興奮しちゃって・・・」と上ずった声で話している。
この白樺の葉のロープは、いったい何に使うのだろう。
世話役の男性は、
「夏至祭のシンボルは大地に突き立てた緑色の柱だ。
皮を剥いた柱を今作った白樺の綱でぐるぐる巻きにして、
精霊が宿る力強い緑の柱に変えるのだよ」と語ってくれた。

かなり長いロープが出来た。
切れないようにみんなで丁寧に持ち上げて、
トップに花飾りを着ける場所へ運部ころには人々の気持ちもぴったり合ってきた。

芝生の広場を前にした位置には、本部席らしいテントの準備も始まっていた。
四隅に結び付けられた白樺の枝には、おそらく邪気を払う魔よけの意味があるのではないだろうか。
思い出したことがある。
日本の地鎮祭では、土地を浄化する力を持つといわれている竹を四隅に配置する。
いずれも大地に感謝し、今日ここで行われる行事が何事もなく無事に済みますように、
という意味がこめられているようで、興味が深まる。
さぁ、次は柱のトップに飾る花輪作りをさせてもらおう。
(つづく)
日本で夏至といえば、朝の気象情報などで今日がその日だと知る人が多いようだ。
しかし、冬が長い北欧では昼の時間が最も長い夏至の日を待ち焦がれ、各地にお祭りが残っている。
今回の旅の大きな目的は、この夏至祭りを見ることだった。
調べてみると、有名観光地や自治体などが観光客誘致のため大々的に行っている場所がある。
こうした作られたお祭りよりは、昔ながらの素朴な祭がないものだろうか。
私は道すがら立ち寄った旅人だが、ただ見るだけでなく出来れば何らかの形で参加するとか、
お手伝いをしたいものだ。
園子さんに相談してみると、
「それなら、うちの近くにいい所ががあるわ」と、請け合ってくれた。
こちらの大学に留学し、スエーデン人と結婚して10年になる彼女は、
情報と経験による強いネットワークを持っている。
ありがたい、とばかりに夏至祭イヴの20日と当日の二日間、
園子さんの住む町・ヴェステロースのホテルを予約した。
ヴェステロースは、ストックホルムから北へ列車で1時間の都市だ。
駅前に植えられた西洋菩提樹の見事な並木が街中まで続く静かな町で、
夏至の日とその前日が祝いの休日になっているせいか、人影もまばらだ。

アグネータさんのお宅では、テレビがどこにあるかわからない。
無いことはないだろうが、テレビの音が聞こえてきたことがないし、
テレビ番組の話が会話の中に登場することもなかった。
久しぶりにホテルで見たテレビは、朝から夏至祭一色!!!
アナウンサーもコメンテーターも、祭りを象徴する花冠をかぶって大いに盛り上げている。
さぁ、今日は夏至祭りだ。

スウェーデンでは、ウォーキングやサイクリングをしている人々が多い。
野の花が風に揺れ、木の枝が木陰を作る自然の中を軽快なスタイルで走り抜ける人の表情は、
誰もが幸せそうだ。
連れていってもらった夏至祭の会場は、
園子さんのサイクリングコースとなっている小さな島の森の中にあった。、

午前10時半頃に森を抜けると、小さな建物と芝生の広場があり、数人の男性が立ち働いていた。
車に乗せてきた白樺の枝や道具類を、どこかへ運んでいるらしい。

女性のグループも働き始めていた。
”God morgon”(グロモン:スエーデン語で「お早う」の意味)
挨拶を交わしながら近寄っていくと、
園子さんがリーダーと思しき人に、私の飛び入り参加の件を話しているところだった。
「どうぞどうぞ、いいですとも。みんなと同じように作業してください。でも無理はしないでね」
日本から来たというと、驚いたことに彼女は小田急線のサガミオオノに住んでいたことがあるとか。
私の車椅子姿を気遣いつつ、励ましてくれた。
まず、私の最初の仕事は、白樺の細い幹から小枝を切り取って数本ずつまとめることだった。
しなやかな白樺の小枝は優しい感触で、手袋無しの掌に気持ちがよい。
次は、この小束をリーダーとともにワイヤーで巻き付けながら、
1本の長いロープに仕上げてゆくのだが、なかなかうまくいかないこともあった。

その理由は、小束の量が作る人によってまちまちだからだ。
大きめのゴロンとした束を渡されるとそこだけ重たくなって、伸ばした時に切れやすくなり、
反対にほっそりした束でも千切れそうになる。
どうも日本人はこういう点が気になるのだが、みんなは気にせず適当に仕上げていく。
それがうまくいくのだから、びっくり。と同時に、「これでいいのだ~」とも納得。

だんだん呼吸が合ってきたところだが、ちょっと一休み。
何しろ日差しが強いので、みんな汗みずくだ。各自紙コップに名前を書いておき、
水分の補給を怠らないようにと、お互いに注意しあっている。
こんなことでも何となく仲間になったような気がして、嬉しい。

夢中になって取り掛かっていたが、気がつくといつの間にか人数が増えている。
先ほどまでは中高年の女性が多かったのに、男性も交えた若い人たちが手伝いに駆けつけ、
ポルトガル語やフランス語などのほか、さまざまなお国ことばが聞こえ始めた。
近くにある専門学校の生徒や、夏至祭で帰省中の若者などのようだ。
隣にいたチャーミングな女性は、南米のブラジリアから友人を訪ねてきたが、
「初めての経験ばかりで、もう興奮しちゃって・・・」と上ずった声で話している。
この白樺の葉のロープは、いったい何に使うのだろう。
世話役の男性は、
「夏至祭のシンボルは大地に突き立てた緑色の柱だ。
皮を剥いた柱を今作った白樺の綱でぐるぐる巻きにして、
精霊が宿る力強い緑の柱に変えるのだよ」と語ってくれた。

かなり長いロープが出来た。
切れないようにみんなで丁寧に持ち上げて、
トップに花飾りを着ける場所へ運部ころには人々の気持ちもぴったり合ってきた。

芝生の広場を前にした位置には、本部席らしいテントの準備も始まっていた。
四隅に結び付けられた白樺の枝には、おそらく邪気を払う魔よけの意味があるのではないだろうか。
思い出したことがある。
日本の地鎮祭では、土地を浄化する力を持つといわれている竹を四隅に配置する。
いずれも大地に感謝し、今日ここで行われる行事が何事もなく無事に済みますように、
という意味がこめられているようで、興味が深まる。
さぁ、次は柱のトップに飾る花輪作りをさせてもらおう。
(つづく)