小さな赤いリンゴ
ローズマリーのインスタント・トピアリー

「まぁ、素敵なトピアリーね。作るのは難しいんでしょ。
ここまで作りこむのは2~3年ぐらいはかかるのかしら」
近くに住む友達は、テーブルのクリスマスオーナメントに興味を示している。
トピアリーとは、主に常緑樹を刈り込んで、彫刻のように形作る園芸用語だ。
「とても簡単よ。材料さえあれば1時間で完成するわ」と私。
「ウッソゥ、信じられない。でも、どうして?」

「ふふふ、種明かしをするわね。これはインスタントトピアリーなの。
あっという間にできるのよ。」
作り方は、
① まず土台を作る。直径約15cmほどの球形のオアシスを用意する。
ない場合は発泡スチロール箱の底などの分厚い部分をカットして半円球をニ個作り、
接着剤で付けてもよい。
② 球形の真下の部分に幹に見立てた木の枝を差し込む。
長さと太さは、植木鉢とのバランスを考えて決める。土の中に入る部分の長さを忘れないこと。
土を入れる前に、幹に見立てた木の枝の端を鉢穴に挿してみる。ガタガタして立たないのは、頭が大きくて
安定しないためだ。こんな時は鉢穴に生のジャガイモを詰めてから枝を挿すと、びしっと決まる。
それでもまだ動くようなら、鉢のかけらや石ころなどで周りを固めてから土をかぶせる。
③ ローズマリーの小枝を長さ10センチに切り、水揚げしておく。
④ 球体に爪楊枝で約7cm間隔の穴を開け、まるで自然に生えているように③を挿してゆく。
⑤ [増毛]が終わったら、黄金色に輝くヘリクリサムや深紅のサンキライの実などを飾りつける。
クリスマスの役目が終わったら、このままにしておく。きれいな形でドライになるので、
枝から葉をこそげ、完全に乾いてから缶などの湿気が来ない容器で保存し、料理やお茶に使う。
「何だか私にもできると思うわ。これなら24日のイブに間に合いそうね」
「よかったらうちのローズマリーの枝を切っていいわよ。こんなにたくさんあるんですもの」
「ありがとう、うれしーい。この一鉢でクリスマスの雰囲気が出ることがよくわかったわ」
「じゃ、がんばってね」
忙しい年の瀬だからこそ、友人とのやりとりに心がなごむひとときだった。
70年前の通販カタログ

どのようなカタログにせよ、ここからは時代を反映した等身大の暮らしが見えてくる。
この「種苗案内」は、私が生まれた昭和16年の春号で、
第2次世界大戦勃発の直前という時代を背景に、発行されたものだ。

帝国種苗殖産株式会社という社名は、なにやら体制におもねるような感じがして気色が悪い。
ところが、ページをめくって行くうちに、このカタログのすべてを皆さんに見てもらいたいと思った。
軍部による開戦への導火線は、いつ火を噴いてもおかしくないほどに緊迫した状態にあり、
暗雲垂れこめた断崖絶壁に立たされていたような時代だったのに、
カタログからは、多くの人々が園芸を愛し、豊かな生活を楽しんでいたことが伝わってくるのだ。

サイズはB5。おそらく当時としてはかなり大きめだったのではないだろうか。
最後の38ページまで、藍のインクでびっしりと印刷されているのはタネのリストだ。
野菜類はもとより、穀類、雑穀、動物の飼料や牧草、薬草、ビート、綿や亜麻、大麻などの有用植物、
和洋の香辛料、多種多様の樹木、水稲に陸稲などなど、まさにタネのデパートといえよう。
内容も濃く、今でも作られている品種が数多い。
例えばトマトのページには写真入りで、ヴィクトリアトマト、不二トマト、世界一トマト、ポンテローザ、
赤大丸トマト、マーグローブ、ゴールデンポンテローザ、ポンニー・ベスト、フルーツトマト、ウインゾール、
早生プリチャード、極早生サットンス 、ベスト・オブ・オール、スパークス・アーリアナ、早生ジョン・ベア
アーリー・ジュール等がのっている。
特筆すべきは、現在人気のある「フルーツトマト」は、もうすでに70年前からあったことだ。
続く
70歳の誓い

今から70年前の今日、私は生まれた。
還暦のときは、仕事仲間やクラスの受講生たちから贈られた赤いグッズが多かったが、
今回の70歳は、古来稀に見るという意味をこめた古稀のお祝いだ。
1週間前には、息子たちの家族がレストランで祝ってくれ、
孫たちの元気な食欲と笑い声に幸せを感じた。
12日には妹二人が我が家へやってきて、3人の合同誕生会を開いた。
昼からビールやワインを開け、大きな皿に盛った特製のにぎり寿司を平らげながら、
子供時代の思い出話に花を咲かせた。
面白いことに、実家で暮らしていた頃は、7人家族のうち5人が12月生まれなので、
1年の最後の月はクリスマスも加わって、ささやかながらも毎週楽しい食事が続いた。
今ではコンビニへ行けば一年中並んでいるものだが、
戦後のあの頃は、手作りのちらし寿司やカレーライス、いや正しくはライスカレー(なつかしいなぁ)
緑とピンクの筋模様が入った寒天、厚焼き卵などがハレの食事として食卓に上った。

今日は誕生日の祝いも兼ねて、夫と国立劇場へ歌舞伎を見に出かけ、帰宅したのが10時。
真山青果による[元禄忠臣蔵」は、従来の筋立てとは異なり、
「大石内蔵助最後の一日」を大きなテーマとして描いている。
赤穂の志士46名が死出の旅路へ赴く白装束で、花道を去るシーンはあっても、切腹の場面がなかった。
それだけに、吉衛門が扮する大石内蔵助の「初志を貫徹」したストーリーの展開がせつなく、
観衆の心を強くうった。
夫は11月で76歳になった。
生涯現役でいい作品を撮るぞ、と目を輝かせる、万年ボーイだ。
それに引き換え、私は腰を痛めてから、物事に対して消極的になってしまったようだ。
これまでは「健康が一番」などと当たり前のこととしてに口にしていたが、
いざ自分が不自由な歩き方にになってしまうと、考え方が切実になってくる。
何年も先のことなど考えずに、まずは今日1日をしっかり生きて行こう。
70歳の記念に、これからしたいこと、しなくてはいけないことを書き出してみた。
★ 廃園になってしまった英国式庭園のリフォームを手伝いたい
★ 我が家の庭のつるバラの誘引と、遅れていた球根の植え込み
★ 長年温めていたことを、一冊の本にまとめたい
★ 未完成のパッチワークのベッドカバーを仕上げたい
★ 本でいっぱいになっている屋根裏部屋を、片づけたい
★ 趣味のコレクション(布、ボタン、バスケット、文房具・・・)を整理する
★ 物置状態のアトリエと和室を何んとか片づけ、外国からの客を泊められるようにしたい
★ リハビリのために、少しずつ泳いでみよう。

書き出せばきりがないから、この辺で止めておくが、
ふつうの元気な70歳でも、ちょっとたいへんかな?という量の仕事だ。
さて、ここが思案のしどころ。
優先順位を決めて、そろりそろりと参るといたそう。
ローズマリーのクリスマスリース

息子たちが結婚して家を離れ、
二人暮らしとなってからクリスマスは遠くなった。
サンタさんがいると信じて、遠い雪の国へ「お手紙」を書いた「男の子」たちは、
もう45、43、40歳のおじさんとなっている。
なぜか今年は昔を思い出すことが多く、
庭で元気に育っているローズマリーで、クリスマスを祝ってみようと思い立った。
枝がしなやかなローズマリーは、木立性の品種でもたわめ易い。
匍匐性なら最初から枝がカーブしているので、さらに易しい。
長めに切り取った枝を、数本ずつねじるようにして丸めると、簡単にサークルができる。
枝を加える個所は、少しずつずらして入れると自然な感じにまとまるので、
フラワーデザイン用のワイヤーで目立たないように止めつける。
注意する点は枝の流れを一方通行にすること。
逆行すると枝の流れがばさばさとなり、見苦しいからだ。

さて、何を飾ろうか。
まだ取っておいたクリスマスオーナメントの箱を、押入れから出して眺めていたが、
ローズマリーの枝にはサイズや重さが合わない。
そうだ、あれならどうだろう。
再び押入れに顔を突っ込み、
「発掘」したのが、キルティングでヨーヨーとよばれているピースを入れた箱だ。
家族の古着を捨てられなくて、きれいなところだけをこうした形で残しておいたものが、
役に立つのが嬉しい。
この中から赤い色のものだけを選んでみよう。
因みにクリスマスカラーと言えば、すぐに赤と緑を思い浮かべるが、
常緑樹で作るエンドレスの丸いリースは、「永遠に命が続く」ことを意味し、
赤はキリストの流した血の色で、「愛」をあらわしているという。
それに、ROSEMARY は聖母マリアの名前と深い繋がりがある。
ヨーヨーは、いろいろなサイズで作っておいたので、こんなふうに重ねて使うとセンターにぴったりだ。
こ
気がついたら、部屋の中はローズマリーの強い香りでいっぱい・・・。
そうだわ、今夜はローズマリーのお風呂にしよう。
切り残しの枝や葉を捨てるのはもったいないし、ジーンとくるあのお風呂も最高に気持ちがいい。
さぁ、晩御飯の支度をしなくては、
ハーブ遊びも、また今度ね。
卓上の遊び
まるでリバテイのような
バスケット作りの季節

12月になると、車の助手席に座るときの目付きが変わる。
窓越しにバスケット作りの材料になるフジやアケビ、ペリウインクル、へクソカズラ等がないか、
と目を凝らして捜すからだ。

身近にある自然の素材で籠を編み始めて、数年になる。
そのきっかけは、アメリカの雑誌で見た味のあるバスケットの写真だった。
手作りをテーマに特集を組んでいたなかに紹介されていた写真には、
「どんな素材でも、まず試してみよう。あなただけの何かを見つけることができるかもしれない。
諦めてはだめ。Try again !」
とキャプションが添えてあった。s
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クズ、ブドウ、ヤマブドウなどでも試してみたが、
作業の点で曲がり具合と言い、仕上がりの見栄えのよさで、
私にはへクソカズラの2年生か3年生が適しているようだ。
ところが、へクソカズラはどこにでもあるとおもったら大間違い。
雑草扱いで、除草剤や市役所の清掃課や緑政課などの「お世話」で、
〈きれい〉な街になっているからだ。

最近、私は新しい素材を見つけた。この小さなバスケットがそうだ。
駅前のグリーンの植え込みにはびこっているカズラフジとおぼしきつる性植物で、
この小さなバスケットを作ってみた。
採集したては、しなやかでひじょうに細工しやすく、濃い緑色も素敵なのに、
若いつるは乾燥すると細くやせてしまう欠点がある。
どこかにもう少し太いつるがないか、
私のきょろきょろ目線はマダマダ続きそうだ。

じつは、私は重度のバスケット・フェチで、これまでに数多くのバスケットを収集してきた。
ダイヤや毛皮のコートは持っていないが、
バスケットを使う楽しさ、眺める喜びを毎日味わっている。
辰巳芳子先生 87歳の挑戦

12月1日は料理家・辰巳芳子先生が、87歳を迎えられた誕生日だった。
愛に満ちた家庭料理のあたたかさを説き、
食事の質を落とさず楽に料理を作れるように、合理的な週単位の献立をたちあげた先生、
また、日本の伝統料理を継承しながらも、
イタリアやスペインで学んだ料理の良い点を日常の料理に組み込んだり、
よい食材を各地で作り、近くで消費する「地産地消」を勧めたのも先生の応援があってこそだった。
先生は料理だけでなく、信念を持って人間の生き方や自然への愛と向き合い、
特に食の面では地球規模でこれからのことを案じておられる。
同じ様なコメントをする女性評論家がいたとしても、辰巳先生のように自ら実践をされている方は少ない。
ハーブのご縁で先生とめぐりあい、たくさんの大事なことを教えていただいている私は、
いつもいつもありがたいと感謝している。

先生の介護の経験から生まれた「いのちのスープ」は、
家庭はもとより病院やお年寄りの介護センターなどの改善につながり、ある種の社会現象にもなった。
また、これからの食を小さい人にも考えてもらう企画として「大豆500粒運動」を、
各地の小学校で広めている。
普通の女性が87歳になった時、どのような暮らしをしているものだろうか。
今月の16日に70歳になる私だが、87歳だったらきっと楽な生き方をしていることだろう。
その先生が、今度は映画を作っておられるのだから、ファイトが生まれるふだんの食事の力は大きい。
来年の秋に一般公開の予定とのことだが、近く予告編の上映がある。
「天のしずく』と題した映画のことも、内容も予告編のことも、
『天のしずく 辰巳芳子ドキュメンたりー映画」で検索すれば、詳細がわかる。
これまで哲学を持って生きて来られた先生のご成功を、私は心待ちにしている。
*写真はHPから使わせていただきました。
メダカのミニミニ水族館

2階の寝室から降りてきて、私は朝一番にこのコーナーへ向かう。
ジャムや果実酒用のガラス瓶に占領された棚で、小さな生き物が朝食を待っているからだ。

「道の駅」には、野菜や果物しか売っていないと思っていたら、
関越高速道路のジャンクション近くにある「道の駅」で、面白いものを見つけた。
おそらく夏休みの子供たちに向けての商品と思われる、瓶に入ったメダカが、
店の隅に売れ残りの感じで置いてあった。
メダカたちは捨てられてしまうのだろうか・・・・。
何故かとても気になり、もう店仕舞いを始めているレジへ幾つかの瓶を持っていった。

* これは赤色のヒドジョウ。最初はグロテスクだったが、愛嬌があり見ていて飽きない。
とりあえず保存食を入れてあった大きめの瓶を探し、よくよく洗って収容した。
瓶のラベルを見て、メダカの種類が多いことには驚いた。
黒メダカと緋メダカぐらいは知ってはいたが、
緋色の体色で美しいスタイルの「楊貴妃」、コロンと太っている「ダルマ」、
青みがかった色でやや大ぶりの「ライトブルー」、
ほんとうに白い体色の「ホワイト」(眼の色は紅くないから、アルビノではない)。
身体の骨組みが透けて見える「スケルトンパンダ」などなどが入っていて、
一挙に私はメダカ大臣になってしまった。
飼い始めてみると情が移り、どれもが可愛い。

何の因果か知らないが、私が世話をしている生き物はこれだけではない。
玄関の踊り場には水甕が5個もあり、泊りがけでの旅はむずかしくなってきている。
一番大きい甕は、大きめの魚のすみかで、見事な尾びれをもつデブちゃんのコメットが仕切っている。
2番目の水槽は、「えさ金」となっていたのを救った集団で〈姉金〉を越して今はかなり大きい。
3番目は一応何かの個性がある金魚たちで、せいぜい「豆サバ」とか『三つ尾』,「朱文金」「もみじ」などだ。
4番目は、印旛沼の佃煮屋から、鍋に入れられる寸前に助けたフナ。
ラストは、一昨年の土用の丑の日の2,3日後に、
近所のスーパー[丸正」で売れ残りになっていたドジョウを引き取ったもの。
「世話が大変でしょう?」と聞かれるが、私にとってはむしろ喜びだ。
小さな生き物がd元気だと、こちらまでハッピーになる。
面白いことに一番目の甕の金魚たちはボサノバが好きらしい。
「美味しい水」を口笛で吹くと、喜んで立ち泳ぎ状態になって集まってくるのだ。
「イパネマの娘」や[フライ トゥ ザ ムーン」よりは反応が強いのも、不思議でならない。
友だちに話したら「「なあに、餌が欲しいだけのことじゃない?」と、一笑に付されてしまったが、
ほんとうに、そうかしら。