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菊が咲く庭を想いながら

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近所の方から、食用ギクの花をいただいた。

東北生まれで一人娘の彼女は、ご実家からさまざまな野山の恵みが届く。

春は芽吹いたたばかりの山菜、夏は採りたての野菜類。

秋は新米に始まり、ヤマブドウ、キノコ、アケビや食用ギク・・・・。

娘を想う母親の愛情と自然を、そのままパックしたぜいたくな宅急便だ。

私も御相伴にあずかることがたびたびあり、何よりもありがたい。


テーブルの上にキクの花を広げ、緑色のガクの部分を外していると、

部屋中に花の香りが漂って、いつの間にか実家の庭を思い出していた。


柿が色づくと赤とんぼが飛び始め、

前庭に植えたシオンをバックに紫やピンク、白などのキクの花が咲き、

蔵の前にある植えこみでは、キンモクセイが香り出す。

「うちにはギンモクセイもあるんだもん」

などと自慢していた子供の頃が、なつかしい。


私の生まれた福島市は、今や、ある意味で世界的に有名な(?)FUKUSHIMAとなってしまった。

忘れもしない、2011年、3月11日の午後、

突然襲った大震災ばかりでなく、人災といえる原発の大事故で、

罪のない人々は無惨な運命を強いられ、美しかった野山は汚されてしまった。

明日が見えない日々を、見知らぬ土地で暮らしている被災者の方々は、

日本中のどこにでも咲くキクの花をを、どのような思いで見ているだろうか。


嵐がおさまるまで腰を低くするパフォーマンスで、罪の意識のかけらもない東電、

自分たちの党の、いや、自分のことばかり考えて遅々として進まぬ政府の対応、

ボランティアの人々の助けも、限界にきている。


私の実家は60キロの地域だが、千葉や茨城が汚染されているように、

かなりの量の被爆をしていると思われる。

福島は、くだもの王国といわれるように、

この季節にはナシに、リンゴ、ブドウなど福島産の果物が店頭に並べられるのが常だった。

ところが、今年はほとんど見かけていない。

1年にたった一度の収穫なのに、風評被害も加わって農家の方たちのこれからはどうなるのか。


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日が翳ってきた。

テーブルの上に置いたキクの花弁に、西日が差している。

今夜は、酢のものにして、明日はてんぷらにしよう。

それにしても、明日は我が身と成りかねない放射線被爆の実態は、

恐ろしい結果となるかもしれない。

ただ、こうして愚痴っているだけでは何の解決にもならないことを知っていても、

つい口から出てしまう。

そして、なんの力もない自分が歯がゆくてならない。

義捐金はかなり送金したのに、一番必要としている人々の手に渡っていないとは、

どういうことか。

これから寒さに向かうのに、心細い思いをしている人々を思うとやり切れない。

久しぶりの青空なのに、気が晴れない秋だ。

夜香木の妖しい香り

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夜と昼の印象がこれほどガラリと変わる植物はあるだろうか。

暗くなるまでは楚々とした風情の、

いや、そこにいるのに気がつかないような平凡で地味な花なのに、

5時を過ぎて薄暗くなってくると、


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少々オーバーだが、「や、や、や、何事?」と驚愕するほどの花の香りが、

あたりに立ち込める。

特に咲き始め、つまり初日の香りは特にねっとりとした妖しいまでの濃厚な香りで、

閉め切った部屋に置くと、くらくらするほどだ。

今夏の猛暑にダメージを受ける植物が多いのに、

西インド諸島が原産地のせいかかえって元気が出て、

これでが今シーズン2度目の開花だ。

英語で、Night blooming jasmin,

中国語では、夜香花、夜香樹

というそうだが、ナス科の樹というのもありそうであまりない。

耐寒性がないと参考書に書いてあるが、

植木鉢を風の当たらないところに置いて、数年来冬を越している。

私の背丈を越したので、日当たりがよい軒下に地植えにしてみよう。

そうだ、万一のことに備えて、挿し木でスペアを取るのを

忘れないようにしなければ・・・・。



気がつけば多肉ランド

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ゆるやかな坂道を降りてくると、

隣家との境界を、コンクリートのプランターボックスで仕切った家がある。

入口に近いところに、何やらごちゃごちゃと並べてあるのは何だろう。


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近づいてよく見ると、多肉食物が並んでいる。

じつは、ここは私の家で、

いつの間にかこのコーナーを「多肉ランド」とよぶようになった。

夫からは[貧乏くさい」という理由から、撤去命令が出ているし、

私自身も[多肉]という言葉が何となくいやらしく思えて、

玄関先に置くのが恥ずかしい気もしている。


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捨てられないのにはこんなわけがある。

私がスランプに陥っていたとき、いや、軽い鬱だったかもしれない。

主婦であり、テレビや講演、執筆などで超多忙の毎日だった頃、

疲労のために体調がすぐれない時は、

元気なハーブや草花を見るのがなぜか辛くてたまらなかった。

考えてみると、これまでこちらがリードしてきた植物との間柄が、

逆転するのが、怖かったのかもしれない。

そんなとき気楽に付き合えたのが、物言わぬこの多肉たちだった。

丈夫なうえに水はいらないから、世話を手抜きした罪悪感がない。

生長が遅いだけでなく表情に変化が乏しいので、こちらが優位に立てる・・・。

落ち込んだ時は、花や緑からの脅迫観念を受けることがあるのだ。

今では、笑い話になってしまったが、

これも園芸療法の成果ではないだろうか。


話は変わるが、背景の擁癖に写っているのが、

先日紹介した「がんばろーズマリー」だ。

丈夫で耐暑性、耐寒性のあるこのローズマリーを挿し木で増やし、

被災地へ送ろうという話に、賛同してくださった方もおり、

仲間が増えたことに感謝している。

山古志村の神楽南蛮

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「山古志村には、カグラナンバンというピーマンそっくりの形で、辛いトウガラシがあるんです」

新潟の湯沢から私のクラスへ通っていたWさんから、

珍しいトウガラシの話を聞いたのは、10数年前のことだった。


江戸時代に日本へ渡来したトウガラシは各地へ伝わり、それぞれ特徴のあるトウガラシが生まれた。

高知県にある牧野植物園で、平賀源内による「蕃椒]譜」を見せていただいたことがあった。

果実の形を基に分類してあり、トウガラシ類が実物大で描かれている。

形の大部分はひも状で、このようなぽっちゃりタイプは少ないようだった。

70数種の彩色画の中にカグラナンバンが描かれていたかどうか、残念ながら覚えていない。


湯沢で仕事を済ませた後、Wさんのお宅へ近所の奥さん方に集まっていただき、

ヒアリングによる資料を取らせていただいたことがあった。

奥さんたちは歴史や種類などにはあまり気にせず、漬物や調味料などに使っている。

興味深かったのは、

自家採取のタネを蒔いていたら、何だか違うものになってきたようだ、と話す人もいた。


その数年後、長岡市へ行った際に青果市場を訪ねたことがあった。、

所長さんの案内で山古志村のカグラナンバンの栽培地へ行ったが、

この辺りは傾斜のきつい山で、道路の両脇の平場は貴重な耕作地だ。

日当たりと水はけがよいので、トウガラシは元気に育ち、つやつやと輝いている。

真田収穫量は数少ないが、珍しさもあって主に築地へ出しているそうだ。


あの日も猛暑で、ひどく疲れた。

所長宅の座敷でご馳走になった冷たい玉露の美味しさは、まさに極上の甘露であった。

お茶をいただきながら、カグラナンバンの由来をうかがった。

カグラは神様を喜ばせるために、神社などでお面をつけて踊りを奉納すること、

ナンバンは南蛮渡来の意味を持ち、おもに東北や北海道一帯で使われている方言だという。

ここまではわかったが、何故カグラなのかが今一つ分からなかった。



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ところが、10年以上たった今、収穫した山古志のトウガラシを見て、

「あっ、そうか。そうだったのね」と納得した。

このてらてらと光る真っ赤な顔は、赤鬼にそっくりではないか。

果実を顔に見立てると、皺の陰影が憤怒の形相になったり、恫喝する表情をみせたりする。

「神楽」は神様を護る、強いガードマンの意味もあったことだろう。


この写真をよく眺めていると、さまざまな表情が見えてくるのが不思議でならない。。

ハバネロ幻想

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猛暑と台風のダメージを受け、

伏せっていた庭の草花たちは、起き上がろうと思っても、まだ一歩を踏み出せないでいる。

ところがハバネロのコーナーだけは、つやつやと輝く深紅の実をつけて、見るからに元気そうだ。


「猛暑などカンケイないョ。いや、カンゲイといったほうがいいかな」

などと隣同士の駄洒落をイメージするのは、原産地が熱帯アメリカだからだ。

その代わり、寒さには弱いことになっているが、

地球温暖化のせいか、日だまりに置いた鉢植えの大株は年を越した例が多い。



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ハバネロは「世界一辛いトウガラシ」として、

数年前まではギネスブックに記載された有名トウガラシだったが、

現在ではインドの「ジョロキア]にその座を明け渡している。


人類ははるかな昔から洋の東西を問わず、競い合って順番を決めるのが好きだった。

それが文化の発展に寄与していることも認めるが、

トウガラシの場合は「辛さ」だけでなく、宝石のようなこの美しさも魅力の一つだ。

これまで約300(種、品種)ほどのトウガラシを育ててみ感じたことは、

果実の形の面白さ、青い色以外はほとんど出揃う楽しみ、推測による歴史と地域性などなど、

じつに興味深い。

15世紀末、コロンブスが胡椒と間違えてヨーロッパへ持ち帰ったトウガラシは、

あっという間に世界中に広がった。

日本へは江戸時代に渡来し、各地に特徴のある名前と形のトウガラシが生まれている。

また、食用だけでなく薬用や呪術、観賞用など、利用法も開発され、発展してゆく。

フィールドワークで資料を採取するなら、今が最後のチャンスなのに、

腰痛のために動きが取れないのが、辛い。


第2次世界大戦が始まった1941年生まれの私は、この12月で70歳になる。

戦後になると暮らしぶりも次第に西洋化してきて、特徴が薄れるから、

戦前生まれで郷土色のある環境で育った方、

80歳~90以上でいろいろなことをよく覚えている方、

を探すのは容易ではない。

しかし、

方言、保存食、寒さ対策、動物の治療、媚薬、まじないなど、思いがけない利用法があるはずだ。


秋の夜長、ハバネロ幻想はいつまでも続いて・・・・。


★ ご興味のある方は「 唐辛子マニア」のカテゴリーも併せてどうぞ。

出来た!  ストリング・パッチワーク・スカート

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「トランテアン」では、リバテイの布を30センチ以上は10センチ単位で切売りしている。

もともと高価な布だから、30センチといっても数種類を使うとかなりの額になってしまう。

そのため、コレクタションやパッチワーク用に、

約50センチ×27センチに切ったカットクロスも売っているのが嬉しい。

キットに用いた布は、このカットクロスを上手に利用しているのでローコストなのだ。

作ってみてわかったことがある。

セットになっているから、プラモデルのように作り方説明書のとおり組み立てればできる

と思ったら、大間違いというもの。

10枚のカットクロスを、それぞれ変化をつけた幅に切り分け、

素敵に並べるアレンジは自分でしなければならないからだ。

例えば上の写真で、左端の Sleeping Roseと 右から3番目の Clementine を

置き換えてみると、イメージがかなり違ってくる。

逆にいえば、これが手作りの楽しみといえよう。

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とうとう完成!


とりあえず、生成のセーターと合わせてみたら、夫は[膨張色だね」と一言。

うーん、黒ならぴったりなのはわかっているが、着たくない気分だ。

ワインレッドのツインセーターはどうかしら・・・。

明るいブルーの半袖セーターも会うのでは?。

そうだわ、このスカートをはいてお見舞いに行こうっと。


新しい一枚のスカートから、暮らしのリズムが変わってきたようだ。


* 一昨日紹介したページのキットは、Sold outになっていて、失礼しました。

よく見たら、Special のページにも、新しいキットを見つけましたのでご参考までに。

とにかく、ここはとてもセンスの良いお店だと思います。

もう一息、リバティのスカート

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洋裁を始めると、時間のたつのを忘れることがある。

洋裁といっても、、私が縫えるのはせいぜいパジャマとか、シンプルなワンピースやスカートに

手提げぐらいのものだ。

いつもは大好きなパステルカラーの布で作ることガ多いのに、

今縫っているスカートは、とても布選びが凝っている。

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上の写真では青みを帯びているがが、

仕上がりがグレー系に見えるシックな配色だ。

間近で見ればよくわかるように、これは12種類の布を使ったティアードスカートで、

私は今、裾の始末をしながらブログを書いている。

ヨークをつけ、ゴムを通せば完成なのに、もうひと息のところで私はわざとぐずぐずとしている。

リバテイ社のタナローンの布地は、しなやかで手触りがよいからだ。


それにしても、この布を12パターンも集めるとしたら、たいそう高額なスカートになってしまう。

誰でもその点を心配するのだが、つい最近このタイプのキットが通販で売り出された。

リバテイの布を長年扱ってきた京都の「トランテアン」という店の人気商品で、

リーゾナブルな値段もさることながら、

数えきれない種類の絵柄の中から、よくもまぁこんなにセンスのよい組み合わせが生まれたもの・・・と、

感心している。

私自身も、似たようなスカートをこれまで何枚も縫った経験があるので、よくわかるのだ。

このスカートのキットは、ほかにパープル系やブルー系もあり、

コーデュロイの愛らしいスカートのキットも紹介されたばかりだ。

トランテアンのブログは見どころがたくさんあるが、お勧めは「トランテアンだより」の[糸偏生活」。

手芸店の女主人という立場に立ちながら、

芸術や生活文化に対して確かなオピニオンを持つ reiko さんが浮かび上がってくるのだ。

さぁ、もう一息で仕上がりそう。

似合ったら、今度の女子会に着て行こうかな。


http://www.trenteetun.com/shop/special.php?no=389



求む マルタゴンリリーの球根

あれほど暑かった日が、遠い日のように思えるこの涼しさ・・・。

今夜は肌寒いという感じで、蟋蟀(コオロギ)のBGMがぴったりだ。

今年はあまりにも異常な気候が続いたために忘れかけていたが、

このぐらいの外気温がノーマルだったのだ。


さて、残すところあと3か月。

10月の庭仕事は気合を入れないと、花咲き花香る春は来ない。

秋まきのタネや苗、球根類の手配はおおかた済んだが、

どうしても見つからない球根がある。

数年前から原種系のユリに惹かれて、入手できる限りの品種を植えてみた。

庭を彩ったユリの数々には、豪華な、薫り高い、ロマンチックな、神秘的な,高貴な、

などなどの形容詞が当てはまる美系ユリばかりだ。

なかでも大好きなマルタゴンリリーは毎年植えてきたのだが、

美人薄命の諺どおり、悲しいかな、2~3年で半分は消えてしまう。


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花のサイズは手のひらを丸めたぐらいで、思ったよりも芳香が強い。

チャーミングポイントはくるりと反り返った花弁だ。

まるで天使の羽のように見えて何とも愛らしい。

淡いピーチカラーのジギタリスと合わせたら、お互いに引き立てあって優しいコーナーができた。

どちらも無限花序なので下から咲きあがっていくため、開花期間が長い点も嬉しい。


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花の形もさることながら、

マルタゴン(Marutagon)という言葉の響きには、ロマンがある。

中世の頃、聖地巡礼に訪れるキリスト教の信者たちを護衛し、

病気や怪我の手当てを主に行う修道会がエルサレムに誕生した。


のちにテンプル騎士団、ドイツ騎士団と並ぶ三大騎士修道会に数えられたが、

数奇な運命をたどることによりマルタ島を拠点に活動していた。

現在は国家を失い、ローマ市内に駐在所のようなものがあるという。

興味深いことに、国連は特別の恩典でこの国の存在を認め、

正式な名称は、「ロードス、およびマルタにおけるエルサレムの聖ヨハネ病院独立騎士修道会」という。

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ピンク色のマルタゴンリリーもある。

同じピンクの花でもオリエンタル系のユリとは、ニュアンスがかなり違う。

来年はもっと植えたいと思っていたのに、いくらネットで探しても残念ながら見つからない。

どなたか、マルタゴンリリーの球根の販売先をご存知のかたがいらしたら、

教えていただけないだろうか。

来年の私の庭は、

バラやニオイスミレ、ワスレナグサ、ユリなどが香るヒーリングガーデンを考えている。

文化の日に、新宿で

菊香る文化の日といえば11月3日。

この日は両親の結婚記念日で、毎年i何か心に残ることをしては二人に語りかけてきた。

さて、今年の11月3日には久しぶりにハーブレッスンのクラスをする予定だ。

詳しくは下記を。

http://www.tg-showroom.com/tokyo-gas/event/index.php?scn=result&id=2727

夏の間はフレッシュなハーブを存分に利用できたが、

これからの寒い季節の中でどのようなハーバルライフができるのか、

我が家の楽しみ方も含めてお伝えしたい。

教材の準備も着々と進んでいる。

例えば、ハーブの香り風呂に用いるハーバルバッグには、小さな贅沢といおうか、

絹のような肌触りがすばらしい、リバテイのタナローンを使うことにした。


2011年の秋冬限定柄から10数種類を選んたが、何んとチャーミングな布だろう。

全部欲しくなってしまい、困っているところだ。


それでは、文化の日に新宿でお会いしましょう。


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