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早く天気になーれ

2~3日前から、
わが家のシンボルツリーになっている
ティユール(西洋菩提樹)の蕾が膨らんできた。





雨が降っていなかったら、
今頃は花盛りで、庭中に蜂蜜のような濃厚な香りが漂っているはず・・・。
そして、花の蜜を集めにやって来たミツバチやクマンバチの羽音で、
耳がおかしくなるほどなのに、聞こえるのは雨音だけ。おまけにひどく寒い。
早く天気になーれ。

朝のおしゃべり

「お早うございます。お届け物ですが」

「いつもお世話様。印鑑はここね」

「ありがとうございます。あのぅ、いい匂いのするこの花は、何ていうんですか。玄関がいい匂いだと素適ですね」




「やはり女性の方だと、目の着けどころがちがうわ。
これはニオイバンマツリというナス科の樹で、夜はもっと香りが強くなるんですよ」

「昨日配達に来た時と、何だか色が変わってるようなんですけど」

「よく気がつきましたね。花の色が最初は青紫、それから紫。最後は真っ白に変化するんです。つぼみの時でも紫なんですからおもしろいでしょう?」






「配達が楽しくなってきました。おっと、油を売っている場合じゃない。
どうもありがとうございました」
「こちらこそ。明日はきっと真っ白な花になってると思いますよ」

山椒で、ヨイショッ






辰巳浜子先生の御本の中に、
「山椒は家の南と北側に植えておくとよい」とあった。
そのわけは、日当たりの関係で育ち方にタイムラグが出来るため、利用期間を延長することが出来るからだ。

いつか家が出来たらぜひともと思っていたが、
今、敷地の中には5本の山椒がある。
北と南にはたしかに私が植えた。しかし、あとの3箇所は小鳥からのプレゼントで、玄関のプランターボックス、アンズの樹の下、薔薇のアーチのそばなどの思いもよらぬ場所に生えている。

こうしたなかには、本物でない山椒もあるから気をつけたい。
見分け方のポイントは、本物なら上の写真のように、
葉のつき方が左右対称だが、
似て非なるものという意味のイヌザンショウは、互生、
つまり葉が互い違いについて、あの香りがない。

ちょうど今頃が収穫期にあたり、今日は350グラムが採れた。
山椒には体内の殺菌や消化促進、健胃に薬効があるとされ、
私の祖母は「毎日必ず1~2粒食べると、長生きするよ」
と口癖のようにいっていた。
うなぎやどじょうに山椒がつき物なのは、臭みを消し
、強い脂肪分を分解するのだという。
もっともこの粉末の山椒は、
秋口に実る果実の皮の部分を挽いて用いるのだ。

青ザンショウは、まず、一掴みを糠床に入れて腐敗を防ごう。
これからの季節は油断をすると、雑菌が入っていやな臭いの糠床になりがちだから。

残りは何度か茹でこぼしてあくを抜き、酒、みりん、
醤油でさっと煮詰めて佃煮にしておくと、さまざまに利用できて重宝する。
また、料理用のストックのほかに、
山椒の佃煮をちいさな蓋ものに入れてテーブルの隅に置くことにした。
そして祖母の教えの通り、
健康維持のためにときどき数粒を口に入れるようにしている。
口がしびれるような場合もあるので、決断力がにぶるときには、
「サンショ デ ヨイショ」などという掛け声も考えた。
しかしあまりにもオヤジ的なので、まだ使っていない。

チュベローズよ、顔を見せて





月下香、夜来香、夜香木。
漢字で書くと似たような植物がある。
チュベローズ、イエライシャン、ナイトブルーミング・ジャスミンなどと
一般的によばれるが、いずれも夜に香る芳香性の植物だ。

久しくチュベローザを植えてなかったので、
大宮のカタクラパークで球根を見つけたときは嬉しかった。
帰宅してすぐに土作りをし、
取って置きのウイッチフォードポターリーの大きめの鉢へ植えた。
4月3日のことだった。

チュベローズはリューゼツラン科の植物で、
すっくと立った茎に強い芳香の白い花が豪華に咲く。
シンガポールやマレーシア、インドなどではレイに使われていたが、
どうやらメキシコが原産地らしい。
以前はアメリカのパークシード社から取り寄せて、上手に咲かせたことがあるので、自信満々。
かけた土を跳ね上げて、元気に芽を出すシーを想像しながら、その日を待っているのだが、その気配はない。
いったいどうしたのだろうか。
これまで何度も掘ってみたい誘惑に、打ち勝ってきた。

6月3日で60日になるが、そんなに発芽に時間がかかるものだろうか。
チュベローズよ、早く顔を見せておくれ。
そうでないと、・・・・・・。

紫菊咲千重「紫玉」





このタイトルを見て、何の名前だと思われるだろうか。
花火大会で放送される尺玉の名称、
あるいは京劇とか歌舞伎の外題と想像してもおかしくはない。

世界的に有名なロザリアン・鈴木省三先生の「ばら花図譜」には、
「薔薇花集」という明治16年(1883年)に出たバラのカタログが、
紹介されている。
この中には当時売り出されていた薔薇苗の名前が和名で記され、
上の写真の紫玉(しぎょく)も、そのひとつだ。
どんな薔薇かは、頭に付けたたったの五文字で
「数多くの花弁が重なり合って、菊の花のような咲き方をする紫色の薔薇」と、
いうことがわかる。
事実、最初は一見赤い普通の薔薇にみえるが、
うろこのように小さな花弁が盛り上がってポンポン咲きになり、
花の色もしだいに青みを帯びてマゼンタから灰色がかった赤紫へと変化する。

このユニークな薔薇は外国から渡来したものだと思いがちだが、
江戸時代後半に自然の実生から生まれた国産のガリカ種だといわれている。

実際に育ててみると、消毒無しでも病気に強い。
紅葉スモモの陰になって日照条件が悪いのに、
それなりの花が咲くのは生まれた風土と関係があるのかもしれない。
今年は早春の強剪定をしなかったので、
細い枝がたくさん出てそれぞれの枝先に花が咲いた。
例年よりも花は小さいが、私はこちらのほうが愛らしくて好きだ。

この薔薇とじつによく似たカーディナルド・リシュリューという、
オールドローズがある。
私は血湧き肉踊るアレクサンドル・デュマ作「ダルタニャン物語」の大ファンだ。
学生時代に鈴木力衛の名訳にどっぷりひたったので、リシュリューと聞いただけで、陰謀渦巻くルイ13世の宮廷が目の前に浮かんでくる。
彼はカーディナル(枢機卿)から国家の宰相になり、
良し悪しは別として近代国家制度の礎を築いた政治家なので、私は最初、彼が流した血の色の薔薇かと思った。
いやまさか、花の名前にそんなおどろおどろしい名前をつけるはずはない。きっと、枢機卿のかぶる真っ赤な帽子から、名づけられたのだろう。
しかし、それにしてもアメリカの友人の庭に巣をかけたカーディナル(猩猩紅冠鳥)は、輝くような真紅で紫系の赤ではなかった。

色名解説の参考書で調べてみると、
カーディナル:ローマ教皇庁の帽子・衣服の色から名づけられた色だが、
スカーレットより暗い深紅色を表すことが多い。
やはり、推理は間違っていなかった。
クリスマスにはバチカンから、ミサが特別番組で放送される。
まだまだ先の話だが、
今度は注意して枢機卿の衣服の色を見ることにしよう。



日陰のフキで

本州の暖地では、
5月も中旬を過ぎるとフキは食べられないほど苦くなり、硬くなっているのが普通だ。
ところが、まだこんなにほっそりとして初々しいフキが採れる秘密の場所がある。






何ときれいなフキだろう。
これでは、皮をむいたら食べる所がなくなってしまう。
あくもそう強くはなさそうなので、キャラブキを作ることにした。
まず、水に1時間ほど晒してあくを取る。
次にまな板の上に塩を置き、産毛を取るつもりでやさしくころがす。
この下準備をすると、茎の食感がさわやかで、
同じ醤油味にしても色が美しく上がるような気がする。

両端の変色した箇所を切り捨て、4~5cmほどに切りそろえる。
底の平らな鍋にフキを平らに並べ、約半分に相当する(水+酒)を加える。
蓋をして中火で煮る。フキに火が通ったら、醤油を加え、好みの味と歯ごたえに仕上げる。

最初に油でさっと炒める方法もあるが、こんなに細いフキではかえって味がしみこまず、仕上がりが硬くなることが多い。

そばつゆの素などで調味すると、好き好きだが食べやすい味になる。

赤唐辛子のせん切りや七味トウガラシで、アクセントをつけてもよい。




あったかい白いご飯によく合う、昔ながらの季節のおかずだ。
酒の肴や、弁当の隅に入れるのもなかなか。

食が進むので食べ過ぎには、どうぞ御注意を。

四つ巴?



夏場所の優勝者は、
千秋楽を待たずに琴欧州に決まった。
しかし、我家の台所ではがっぷり四つといおうか、
四つ巴とでもいうのだろうか、
大変なことが起こっている。

食器を洗ったあと、順番に重ねていったら、どうした弾みか、はずれなくなってしまったのだ。
一番下が白い釉薬がかかった片口、縦にはまってしまったのが染付けのどんぶり、そこへ美濃焼きの片口が意地を張って動かず、最後に北欧生まれの小柄なダンスクが、のしかかっている。

意図して嵌めてもこうはいかないだろうに。
押しても引いてもびくともしない。

洗剤でも駄目だった。
油ならどうだろう。
後始末が思いやられていやだなぁ。

こうなる前に、気をつけなくては。
いやぁ、ほんとうにまいった、まいった。


名残りのアイリス

午後、久しぶりに美智子さんから電話があった。

彼女は安比高原にあるペンション「ウイングライト」のオーナーで、
誰にも負けない大の花好き。
花や自然を通して地域の活性化に取り組んでいるが、この不景気の波はリゾート地をもろに襲い、彼女も苦戦中だ。
細やかな心配りを欠かさない彼女のおもてなしは誰にも真似のできないものがあり、
生まれつきのバイタリティーと明るさを求めて、人々はウイングライトに集うのかもしれない。

美智子さんとは、盛岡市内にある社会福祉法人「生き生き村」の、ボランティア仲間として知り合ったが、こうして長く続いているのも彼女の人間的な魅力に負うところが多い。
ひとしきり共通のショックなことについてぼやきあい、気分が収まった所で初めて花の話になった。
昨年、彼女は知り合いの方から約160種の水仙のコレクションを受け継いだが、4月から咲き出して、遅咲きの品種はまだ咲いているという。
そのうちに、下界ではもうとっくに終っている水仙ともう一度会える旅、などという企画も、可能になるのではないだろうか。

今、我家の庭では名残りのアイリスが、降り始めた雨に濡れている。
特に香りのよい品種がこの冴えた色のブルーアイリスだ。
宿根草中心の「ウイングライト」の庭にも似合うので、
この秋には、球根を送ってあげよう。

そういえば今年はカッコーの鳴き声を聞いていない。
安比高原へ、カッコーを聞きに行きたいものだ。







43年目の結婚記念日

43年前のこの日も、今日と同じように爽やかな日だった。

なぜ覚えているかといえば、1965年5月23日は私たちの結婚記念日だからだ。
一ツ橋の如水会館で式を挙げ、披露宴を行ったが、
夫の友人として鷹司平通氏、私の側には飯田深雪先生が列席してくださったことは、一生忘れられないありがたいことだった。

新婚旅行は、九州から種子島と屋久島への11日間。
当時としてはかなり長期でユニークなコースである。しかし、新妻が後になって気づいたのだが、なぜか行く先々に必ずSLや電車、トロッコなどがいた。つまり、新進鉄道カメラマンの撮影旅行に付いていったのだった。






孫たちからお祝いのメッセージが、ファックスで届いた。
二人とも、何と心優しい子供に育ったことだろう。
夫にはふさふさとした頭髪が、私のスタイルはほっそりと描かれている。
そうか、これはきっと新婚旅行の頃を想像して描いたのかも・・・。

ありがとう! 尚ちゃん、美海ちゃん。



縁あって知り合った大宮の佳人からも、花束をいただいた。
清水園のSetsuri Shimizu さん、どうもありがとう。



アンニュイな薔薇



旅から帰って、まず行ったことはハサミを手に庭へ。
疲れた体に薔薇の花の強い香りが、少々きつい。
これまではこんなことがなかったのに・・・。

ひとつわかったことがある。
体調が思わしくない時に活けた花は、
いまひとつ何かが欠けている。
フォワイエに飾った薔薇のけだるさに、そう悟った。

アンニュイな薔薇は、答えてくれそうもない。

わくわくの錦市場―2

続いて気になる京の食べ物第2弾!



和も 洋もこまごまとした香辛料たち。




クチナシの実、月桂樹の葉、なども・・・。




愛らしい飾り化粧をした生麩。お吸い物がいっそうおいしくなる。


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京の漬物には、定評がある。できたら全部試食してみたいほどだ。




昆布の味が滲みて、少し酸っぱさが出てきた頃を好む人が多い壬生菜の古漬け。

白いご飯に、熱いお茶、そしておばんざいがあったらこれほど幸せなことはない・・・。

わくわくの錦市場ー1

「京の台所」といわれる錦小路の市場は、東西に長い。

西は高倉通り、東は大丸デパート手前の寺町通りまでの一本道だ。
この両側に軒を並べる店がおよそ150。
季節の野菜、旬の果物、川、湖で取れた魚、全国から届いた珍味や出汁の素材、お惣菜、漬物、米、うどんや寿司、甘味どころなどなどが、およそ400メートルの長さで軒を連ねている。
食品ばかりではない。道具の店も多く、打ち出しの台所用品で名高い「有次」などは、さながら美術館のようだ。

目に止まった野菜関係を紹介しよう。



まだハウス物のトウガラシ。間もなく露地物の万願寺や田中トウガラシが出回る。「ジャコと炊いたん」は代表的な京のおばんざいだ。




茎の赤いホウレンソウ。味は変わらないそうな。




京都のタケノコは、手入れが行き届いているので、やわらかでデリケートな味だ。1本7000円のタケノコを売っていたが、悪い夢でもみているようだった。これは破竹。




香りがよいニンジンのおろぬき菜。おひたしでもサラダにも。




まるで芸術品のようなササガキゴボウ。

高瀬川の見知らぬ花

ホテルで朝食を取った後に、妹たちと散歩へ。
京都市役所に近いこのホテルは、どこへ行くのにも便利だ。

浅いせせらぎの高瀬川で、カルガモ(?)を眺めていたら、
小さな橋の袂に愛らしい花を発見した。
水色の小さな花で、下から上へ無限の状態で咲いている。

残念、水の中に半ば横たわっているので、手を伸ばしても届かない。
ところが、末の妹は手にしていた傘の取っ手でらくらくと引き寄せた。
覗き込んだ手元には、オオイヌノフグリによく似た花がいるではないか。
聖女ベロニカにちなんだ学名だから、調べるとすぐわかるに違いない。








後ほど牧野植物大図鑑で調べたら、葉のつき方がちょっと気になるが、
おそらくカワヂシャ(Veronica undulata)ではないだろうかと、見当がついた。
本州を含むアジアの温帯から熱帯にかけて分布し、川中や田の畔などの湿地に生える越年草。高さ30~60センチ。初夏に開花し、紫色をした若い葉は食用になるとある。
タネを採取できたので、蒔いてみて特性を調べてみよう。

10時半に前々から訪ねてみたいと思っていた「トランテアン」へ。
ここは英国の美しい布を扱っているリバテイショップで、
ロンドンの本店へ行かなくてもいいほど品揃えが充実しているようだ。

4時10分から、先斗町の歌舞練場で「鴨川踊り」を観賞。絢爛豪華な舞いや、ストーリー性のある舞踊など次々に繰り広げられる絵巻物の中、特に印象深かったのが、創作舞踊の「羊羹」だった。
ベテランクラスの踊り手二人が、羊羹の作り方を賑やかな囃子とともに踊るのだ。この囃し方が素晴らしいメンバーで、時には踊りよりも優っていたと思う。
観客の観察も忘れてはいけない。祇園や上七軒などの花町からのきれいどころやお茶屋さんの女将、同伴してきた大金持ちのご隠居風や社長の面々など、まるで映画や芝居をライブで見ているようで、楽しかった。

夜は三条のインド料理店「ケララ」へ。
サービスも味もよかったが、「マサラドーサ」があったのには、びっくり。
ムンバイのタージで食べて感激し、京都で出会えるとは!!!
「私もムンバイの出身です。マサラドーサを注文してくれてありがとう。
誰も注文してくれないので、がっかりしていたのです」と、ハンサムなオーナー(?)の弁。
マサラドーサとは、透けて見えるほどにパリッと焼いた薄い皮で、スパイシーなポテトや野菜をくるんだ軽食である。

今度は途中下車してでも、この店にまた寄ってみたいものだ。

美しい京料理

京都への旅を、メモしておこう。
二人の妹と新横浜駅で落ち合い、新幹線で京都へ出発。
今回の旅は、京都に住む妹の息子、すなわち甥の結婚式に出席するためだ。
3月に八丈島へ弟妹旅行をしたばかりなのに、親しい仲の旅は何度でも嬉しい。
車窓には、田植えの済んだ水田や、麦の秋が・・・。

結婚式は京都市内の今宮神社で古式ゆかしく、しかもシンプルに行われた。
披露宴は場所を移して、京会席の料亭で。
目にも美しく、デリケートな旬の味わいを楽しめる京料理のコースの中から、
数点をピックアップしてみた。













器と料理のバランスも、何と美しいことか。

それともう一つ感じたことは、
適当な間合いを取りながら、年輩の仲居さんたちがきびきびとサービスするさまも見事だった。まさに修練を積んだプロのワザといえよう。

夕方は弟の家の甥と姪も誘って、四条河原町へ。
宮内庁御用達の「原 了郭」で黒七味を求め、弟へ言付ける。
七味をローストしたこの品は、スパイシーな風味が絶品。
東京では銀座松屋、青山紀伊国屋などで買えるが、本店はここだ。

ここまで来たら、お定まりの「鍵膳」へ。
女性群はクズきりを黒蜜で、甥だけは白蜜を選んだ。
歩きつかれて汗ばんだ身には、この冷たくて滑らかな甘い食べ物が、とりわけ美味だった。


青い花の不思議な力



昔、北欧の人々は、「青い花には不思議な霊力が宿っている」と信じていた。
これは北欧神話の最高神ドナー(雷神)の稲妻の色が、青い花に宿ったためだという。
例えば、「枕もとに青い花を置き、誰にも気づかれないように、
好きな人の名を三度唱えて眠ると、愛しい人が夢に現れる」とか、
「青い花を持っていると、鉄砲で撃たれても死なない」
「青い花には鍵を開ける力がある」などなど、
その威力の例は数多い。

今朝、庭に咲いていた青い花は、アイリス、ムラサキツユクサ、ペリウインクル、スキラ・ペルビアーナ。
青いガラスのカップに活けて、そっとつぶやいてみた。
「これから京都へ行くの。3日間の無事をよろしくね」

では行って来ま~す。

花の香りのコラボレーション



庭に満ちている花の香りは、少しずつうつろっていく。
昨日までは馥郁としたバラの香りのアンサンブルだったが、
今朝は清清しい柑橘類と優しい野バラのデュオ・・・・。

素敵にコラボレートしている実生で育てたグレープフルーツの花と、
台木の野ばらを、
大きなガラスのピッチャーにいけてみた。
この組み合わせは、今までにないほど清純で上品な最高の香りだ。



純白の5枚の花弁が端麗なレモンの花。
心身ともに浄化されるような香りを、胸いっぱいに吸い込んで。




「おまけのばら」とよんでいる台木のバラ。
普通は台木は切ってしまうのだが、こんなに可愛いらしくて、
それに最高の香りの野ばらが咲くのだもの、
いけないとはわかっていても切れやしない。




ポメロの花。果実が大きいせいだろうか、
花弁もぽってりとして、香りも濃厚だ。
この他、今、庭にはシトロン、キンカン、四季橘、シークァーサー、カボスなどの柑橘類が清清しい芳香を漂わせている。



小さなばらを寄せて



バラといえば、某デパートのマークを連想する人が、
まだかなりいるようだ。
大輪のバラはたしかに立派でゴージャスだが、
私は、優しい色の小輪房咲きや、中ぐらいのサイズのバラが好きだ。
それも1種類だけでなく、数種類寄せて活けたり花束にすると、
ロマンチックな雰囲気が出る。

庭のあちこちから切ったバラを、セイジグリーン色の水差しに活けてみた。
花器はたくさんあるのに、
最近はコンランで求めたこればかり使っている。
古いリードオルガンに飾ったら、お互いに引き立てあってよく似合うようだ。




















活けたバラは紫玉、グルーテン・ドルスト、ポールズ・ヒマラヤン・ムスク、ラベンダー・ドリーム、ブラッシュ・ノアゼット、コーネリア、ダマスク・ローズ、ブルーボーイ、クレール・マタン、バリエガタ・デ・ボローニャなど。
ただし、クリーム色のシュラブとピンクのつるバラの名前が不明。

花屋では売っていない素晴らしい香りの花束を、今日も友人に送ってあげよう。


祝・キッチンガーデンクラブ50回



「蒔かぬ種子は生えぬ」という諺がある。
しかし、蒔いた種子に水をやり、愛情深く見守りながら、
時に応じて肥料を与えれば、ぐんぐんと生長する。

RHSJ(英国王立園芸協会日本支部)の野菜を愛する会員たちが育てた
KGC(キッチン・ガーデン・クラブ)も少しずつ育ち、小さな花も咲き始めた。

今日は私が顧問をつとめている、
KGCの50回目を祝う記念の例会に出席した。








場所は目黒にある「エルガーハウス」。
香り高い薔薇が咲く、美しい英国式庭園で知られるレストランだ。
庭をのぞむコンサバトリーで、アフタヌーンティを楽しみながら、会は始まった。
参加者はおよそ50名。
お世話になた講師の方々や、9年間の長きにわたって励ましてくださったRHSJの関係者、遠くは長野県から来てくださった小林先生ご夫妻、富山県から駆けつけた猪熊さんや、忙しいスケジュールを調整して参加したメンバーなどなど、顔ぶれも多彩だ。
卓上花は会員の大橋さんの作。大根と人参がカービングのワザでまるで本物のバラの花のようにみえる。



2種類の紅茶とともに、味わったPudding3種。
上から時計回りに、
★オレンジママレードプディング(オレンジが香る爽やかなプディング)
★ステッキートフィープディング(黒糖風味の、どこかなつかしい味わい)
★ルバーブクランブル(ルバーブにクッキー生地を載せ、オーブンで焼き上げたもの)



イギリスの雰囲気そのままに盛り合わせた、

Scone2種
★プレーン  ★コーンとチーズ

Dericatessen
★ホウレンソウとキノコのキッシュ

Cookies
★ティークッキー ★マドレーヌ

どれもいいお味だったが、特にスコーンに添えられたクロテッドクリームが美味。英国のデボン州で味わったものとよく似ている。日本にもこのダブルクリームがあるのだろうか。あるいは英国から取り寄せているのか、聞きそびれてしまった。 






会の幹事役の御倉さんに、感謝をこめて花束の贈呈。
この9年間、会を続けてこられたのも、彼女をはじめ世話人の方々の努力のおかげだ。
やはり、「育てる」ことが好きなメンバーだから、「KGC]という苗をを枯らさずに、ここまで成長させたのだろう。

まだまだ蕾をつけている小枝に、
これからどんな花が咲き、どのような果実が実るか楽しみでならない。

禁断の花・ケシの花



台風は勢力が弱まって、北の海上へ抜けたようだ。
それなのに雨は降りやまず、庭のナガミヒナゲシは身をすくめて震えている。
ヨーロッパ生まれのこのケシは、あっという間に日本中に広がり、
私は屋久島や沖縄、北海道で見たことがあった。

ケシといえば、今日のニュースでこんなことが報じられていた。
栃木県の下妻にある公園で、ヒナゲシだと思ってタネをまいたところ、
植えてはいけない阿片ゲシが生えてきてしまった。
その数10万本以上に及び、
昨日は抜いても抜いても間に合わず、
夜には警官だったか警備員が、盗難防止のために見張りをしたそうな。

問題のケシの花は、
くすんだライラック色の一重の花弁で、
センターに太い刷毛ではいたような黒のブロッチが入っている。
葉の色は粉っぽい緑灰色。
葉の形やつき方も変わっていて、一度見たら忘れられないシックな花だ。

なぜこの美しいケシは、栽培禁止なのか。
花が終るとケシ坊主が出来る。
この若い果実を刃もので傷つけると、
アルカロイドを多量に含む乳汁がににじみ出てくる。
これを精製したものが麻薬のモルヒネなのだ。

タイのゴールデントライアングル、北朝鮮などの栽培が知られているが、
日本でも江戸時代には盛んに栽培されていたという。
丸山応挙の描いた芥子図を、サントリー美術館で見たことがある。
妖艶な白い芥子が印象的だった。
幕末には中国や台湾などへ輸出しており、たしか昭和29年に禁止令がでるまで各地で栽培されていた。
その名残というのだろうか、知ってか知らずか、網走や長野の御代田、
最近では所沢でこの禁断の芥子が咲いているのを見たことがある。

イギリスでは花屋で観賞用として、Opium poppyの名でタネを売っているので、
ロンドン市内でも田舎でも、堂々と花壇に植えてあった。
それがまた、ウットリするほど美しいのだ。
黒に近い赤、深いパープル、純白などの一重や半八重、
薔薇色や朱鷺色の豪華な八重咲きなどを、キューガーデンでウットリと眺めたこともあった。

いったあの国では、麻薬を作って悪事を働く人はいないのだろうか。

テレビのニュースで見たケシの花に、
これまで封印していたあのゴージャスなケシを思い出してしまった。


そうだったのか・・・

今日、1通のメールが管理人経由で届いた。

差出人は、平田貴子さん。

メッセージを読んでいくうちに、
私が今まで思い違いをしていたことに気がついた。
教えてくださった平田さん、本当にありがとう。

いいチャンスなので、少しでも多くの人に知ってもらいたいと思い、
原文のままで紹介させていただくことにした。

*      *        *        *  

広田様
いつもブログをたいへん楽しく拝見しております。

さて、今回メールを差し上げましたのは、2006年2月22日の、
「猫にピアスをつけないで!」という記事を先ほど読みまして、
これはもしかして不妊手術を受けた印として、ピアスを付けられた猫ではないかな?と思った次第です。
ボランティアで野良猫の世話をしている人たちの間で、
手術を受けさせた猫とわかるように、目印としてつけているというのを、
雑誌か新聞の記事で目にしたことがあるのです。

ネットで検索してみたところ、最初にヒットしたページがここでした。

http://www.kt.rim.or.jp/~taya/pianeko.htm

御参考になればと思います。

*       *        *        *                                                          詳しいことは、ホームページを読んでいただくとよくわかる。
私自身も、「そうか、そうだったのね」と、つぶやいてしまったほどだ。

思い当たることがある。
私はガーデンキャットのまり子に、手術を受けさせるつもりでいた。
ところが、今年は雄猫がよりつかないのだ。
まり子に魅力がないからだとばかり思っていたが、
そうかそうだったのか。
ピアスは取ってしまうし、変質者の仕業などと書いてしまって、
ほんとうに申し訳ない。

まり子に手術を受けさせてくださったボランテアの方、
ていねいに教えてくださった平田さん、
どうも、ありがとう。

                        

西洋菩提樹につぼみが





雨の日が続いて、
今日はカーディガンを着るほど、肌寒い1日だった。

庭へ出ると、
ひらひらのフリルを頭につけたアイリスや、
カップ咲きのオールドローズは、
雨を含んだ花の重みでうなだれている。

晴れていれば、ポメロやシトロン、レモン、四季橘など、
咲き始めた柑橘類の香りが庭中に漂うはずなのに、
ほとんど感じないのは温度が低いからだと思う。

寒くてもニコニコと元気なのは、西洋菩提樹だ。
雨に濡れて一段と緑が濃くなり、葉も目に見えて大きくなった。
見上げれば、葉陰に小さな蕾がシルエットになっている。
あと2週間、いえ、3週間?
2階の寝室まで届く、西洋菩提樹の花の香りでめざめる朝が、
今から待ち遠しくてならない。

シャオとユンタが表紙に

1月16日と2月5日に紹介した、
カリスマ猫のシャオちゃんとハンサム犬のユンタくんが、
ユニークなフリーマガジンの表紙を飾っている。

この雑誌の名前は[COSY+」
サブタイトルにCIRCLE OF SHARING YOUR PLUS とある。





コージーとは、「心地よい場所」という意味だ。
そして、この空間は人だけで創るのではなく、
この世にかかわるすべての生き物が奏でるハーモニーではないか、
とサブタイトルは語りかけている。

私の弟や妹は、みんな生き物が好きだ。
生家の禅寺には誰かが境内に置いていった猫が何匹もいて、
私たちは小さいときから動物との交流を持つことが出来た。
母が生き物に対して、いつも優しくしていたのを、
いつのまにか私たちが受け継いでいたのだろう。
私も弟妹たちも、これまで何匹も捨てられた猫の世話をしてきたが、
シャオちゃんも実は同じ境遇の子だった。
不思議なことに、赤ちゃん猫が鳴いていると、
夜中でもどんなに喧騒な場所でも、私には聞こえる。
そして、何を訴えているかがよくわかるのだ。

この本では、捨て猫や捨て犬などに暖かい居場所を見つけ、
飼う人、飼われるものの差別なく、
お互いにに気持ちのよい暮らしを・・・という提案と、実例を紹介している。
しかし、けっして声高ではない。
見せ掛けではないボランテア精神が、どのページにも流れている。

創刊3号のようだが、どうか長く続くことを・・・。

問い合わせ先  http://www.cosyplus.com/

雨が降る前に

ちょっと寝坊をしてしまった。

いつもは5時には起きているのに、もう6時を過ぎている。
何となく空気が優しいせいか、ベッドの中でぐずぐずしていると、
頭の上にある天窓でかすかに雨の音がした。

雨だ、久しぶりのお湿りで嬉しいな。
ぼんやり喜んでいたら、
薔薇が濡れることに気がついた。
せっかく咲いた薔薇だもの、濡らして傷めてしまうよりも、
切り取って眺めてあげよう・・・。





あわてて飛び起き、鋏を片手に庭へ出た。
幸いまだ小降りだ。
大きなバスケットに切り取ってきた1回目の薔薇は、スブニール・ド・ラ・マルメゾン、ダマスクローズ、チャールズ・レイニー・マッキントッシュ、コーネリア、ウエデイング・デイ、ポールズ・ヒマラヤン・ムスク、ラベンダー・ドり-ムなどなど。

朝御飯を済ましてから、
今度はたくさん咲いている紫玉を切らなくては・・。

サンザシの花に英国を想う





東側の垣根に植えたサンザシが、咲いている。
リンゴと同じバラ科に属するこの樹は、英語でMay、あるいはHawthornという。枝という枝には、粒々に見える純白の小花が集まって咲き、満開になると雪が積もったように見える。
これは私が味わっている、「ちょっぴりイギリス気分」なのだ。

イギリス人にとって、この花は特別な花だった。

ピルグリムファーザーが大海原の荒波を越え、夢と希望と命を託して新天地へ向かった船の名が、「メイフラワー号」だった。

チューダー王朝のころ、5月1日のメイデイー(5月祭)には、こんな祝日があった。
村人たちが森や林から、花盛りのサンザシの枝を切り取って、歌い踊りながら広場へ集まり、中央にサンザシやリボンで飾ったメイポールを立てた。そして、最も美しい娘をメイクイーンに選び、にぎやかな音楽とともにモリスダンスを踊り、春の訪れを祝ったものだった。
この祭りはストイックな清教徒の顰蹙を買い、17世紀に禁止となったが、現在でも各地でこの踊りを継承しているチームがある。
1985年の夏、ケント州で素朴なリズムとともにこの踊りを見たとき、
中世の時代へタイムスリップし、白昼夢を見ているようだった。

10年ほど前、日も長くなった5月の初旬、
NHKのBS番組「太陽の食卓」の取材のために、ロンドンの北に当るサリー州から西部のデボン州までと、デボンからロンドンまでの長距離を一人で車の旅をしたことがあった。
田舎道にはサンザシのHedgerow(生垣)が多い。
どこまでも連なる牧草地の丘や農地を区切るのも、白いレースで飾ったようなサンザシの生垣だった。

あのなつかしいサンザシをわが家の生垣にして、
私はイギリスの想い出に浸っている。

スイカズラ模様の夏服







今年の夏服ができた。

ウィリアム・モリスがデザインした「ハニー・サックル」の布を眺めていたら、創作意欲が湧いてきた。
そうだ、ラグランスリーブの半袖ブラウスと、
3段切り替えのティアードスカートの、組み合わせにしてはどうだろう。

ひだひだの華やかな花弁を持つオピウムポピー、ゴージャスなフリティラリア、からみつくつるが艶かしいハニーサックル・・・。
いずれも模様がはっきりとしているので、型紙無しで模様を優先し、
体に合わせて縫ってみた。
3日間で仕上がり、いよいよ試着。

地直ししたリバティーのタナローンの生地は、絹のように滑らかで、
汗ばむ素肌に心地よい。
オピウウムポピーとハニーサックルのハーブ柄で、
しかも手作りの服というのは久しぶりだ。

白いつるバラのトンネルに洋服をかけて、ぱちり。
初夏を告げるバラの香りに、何か幸せな予感がしてきた。



今夜は「ミス・マープル」

私は基本的に、ミステリーものは苦手だ。
必ず、殺人事件が絡むからである。
ただし、テレビドラマの「ミス・マープル」だけは例外。

昨夜寝る前に、テレビのチャンネルを回してみたら、
見覚えのあるシーンが写し出されていた。
後からわかったのだが、それは「予告殺人」というタイトルのドラマで、
下宿屋を舞台に次々と起こる殺人事件を、
ミス・マープルという、おしゃべりで見たがり屋のおばちゃまが、
解いていく。

原作者のアガサ・クリステイーの生誕130年を記念して、
「マープル・シリ-ズ」を、NHK のBS2で放映したのは2006年のことだった。
今回は再放送のようだが、調べて見たらあと2回しかない。

今夜24:10から「書斎の死体」
明日5月8日23:00から「パディントン発 4時50分」

あらあら、今夜の回がもう始まってしまう。

私が楽しみにしている見所は、あらすじや謎解きよりも、ファッションや
ガーデニング、インテリアに注目すること。
ミス・マープルはいつも信玄袋みたいな大きなバッグを持っていて、暇さえあれば編み物をしている。その手さばきの見事なこと。それに彼女のニットウエアが上等でお洒落だ。色も材質も編み方のテクニックも高級。
彼女の帽子にも注目。色は変われど、スタイルも素材もおなじぺたんとした
帽子だ。

架空の土地のセント・メアリー・ミードのコテイジに住むミスマープルの庭や、隣人たちの庭がたくさん登場する。庭のスタイルや咲いている花々を楽しむべし。
同じくインテリアも興味深い。
昨夜の番組には、部屋ごとに異なるウイリアム・モリスの壁紙が数種類写っていたし、アールヌーボーの絵付けでシェリー窯のコーヒーカップもちらっと見えた。

さて、今宵は?  間もなく、始まり始まり!!!

桑の実が実る頃



昨年、7号ポットのMulberryを、地植えにした。
30cmほどのほっそりとした苗だったのに、見る見る大きくなって私の背丈を超し、
枝という枝にびっしりと実をつけている。

このマルベリーとは桑のことで、
かつては絹糸を採る蚕の食料として、各地で栽培されていた。
私が小学生の頃、まだ桑畑は残っていて、
養蚕農家だけでなく一般の々も、
蚕に対して「かいこさま」と様の敬称をつけていたのを、今でも覚えている。

6月頃に、
赤みを帯びた黒い実が鈴生りになる。
指でつまむとジュースが滲み出し、爪の先はすぐに青紫。
食べるにつれて口や舌も、何ともいえない色になり、
どんなことをして道草を食っていたかが、わかってしまたっけ。
ある時、お土産に母の手作りの体操着の胸ポケットに、桑の実を入れて帰宅すると、つぶれて白い布地が真っ赤な色に・・・。
あわてて洗濯石鹸でごしごし洗ったら、もっとひどい青黒い色になって、けっして落ちなかった。
今にして思えば、石鹸のアルカリが反応して触媒になり、色止めをしたのだろう。

そうそう、こどもたちは桑の実をクワゴといっていた。
我家のクワゴが実る日も、近いようだ。

鶴岡のチマキ




今日は端午の節句。
妹が届けてくれたチマキが、とてもきれいなので紹介をしたい。

正確にいうならば、これは妹の山形出身の友達の、息子の嫁の、お母さんの作だ。
このお母さんは鶴岡に住んでおり、
近所の達人から作り方を教わったという。



新しい大きな笹はまだないので、
去年の笹の葉を乾燥させておき、もどして使う。
まず、笹で3角形を作り、もち米を詰める。もう1枚の笹で蓋を被せ、紐で縛る。
固定用の紐は昔はイグサだったが、細く切ったビニールで代用を。
きれいな正三角形に作るのには年季がいる。
最も力を入れるのは、桜の樹を燃やして採った灰であく汁を作るのに、時間をかけることだと聞いた。桜以外の樹では、この色が出ないのだという。

桜のあく汁で米入りの笹まきを茹でる。
笹を剥がすとゼリー状になった黄金色のちまきが。




黒豆入りの黄な粉をかけていただく。
黒蜜でもひじょうによく合う。

歯ごたえはゼリーのようで、なめらか。かすかに干草というか、
笹の葉の匂いががして、少女の頃に戻ったような気がした。

「のらぼう」という菜っ葉



チャイムの音が鳴って、荷物が届いた。
段ボールを開けてみると、「のらぼう」と小松菜がどっさり入っている。
先日、久しぶりにお会いした小金井の叔母様と、
叔父様の生まれた五日市に伝わる伝統野菜・のらぼうに話がはずんだ。
「今年はもうおしまいだから、来年はきっと送ってあげるわね」
という話だったのに、
「幸いにも五日市の甥が送ってくれましたので」と叔母のメモが入っていた。

こののらぼうとはカキナの一種で、秋に苗を植え付けし
春にトウ立ちした茎を掻きとって食べる菜っ葉だ。
茹でたときにあくが出ないのが特徴で、甘味があり、鮮やかな緑色が何とも美しい。
一番美味しい食べ方は、茹でた時の薄い塩味で、何もつけずにそのまま食べること。
もちろん、おひたしやマヨネーズ合え、味噌汁の具、煮浸し、オイスターソースの中華風など、どんな料理にも合う。

私は長い間、のらぼうとは青梅や五日市の地域にしかない、
伝統野菜だとばかり思っていた。
ところがあるとき、新聞で川崎市の菅にものらぼうが伝わっていることを知った。
そういえば、埼玉県の比企や小川か嵐山辺りでそっくりのかき菜を買ったことがある。
東京の西の多摩地方、神奈川、埼玉地方に残るこのユニークな野菜の由来とは?

野口種苗研究所・野口勲先生のHPによると、
Http://noguchiseed.com/yasai/norabou.html

次のような歴史的な事実もわかった。
明和4年(1767)、幕府の関東郡代、
伊奈備前守忠宥(いなびぜんのかみただおき)が江戸近郊の天領の村々に、闍婆菜(しゃばな)のタネを配布した。
後の天明、天保の大飢饉の折に、この菜っ葉のおかげで多くの人々が命拾いをしたという。
のらぼうの語源は、丈夫な野良ばえからきたものとか。
さらに、興味深いのは、西洋のカラシナの系統らしく、
おそらくジャワ経由でオランダの交易船で渡来したものではないかという。また、他の野菜類と交雑しなかったのは、自家不合和性がないためだとか。

それにしても江戸時代のお上には、立派な方がいらっしゃったものだ。
三百数十年の時を超えて、私たちが遺伝子組み換えのない安全で美味しい菜っ葉を食することが出来ることに、本当に感謝したい。
願わくは、社会保険庁や道路族の役人・代議士たちに、伊奈備前守の爪の垢でも煎じて飲ませたいものだ。

ヒロインの名前のハーブ




庭のあちこちで、
ペリウインクル(ツルニチニチソウ)の青紫の花が咲いている。

私はこの花を初めて見たとき、
「あつ、この花の色・・・」と思わずつぶやいてしまった。
それは高校生の時に読んだコレット作の
「青い麦」に登場するヒロインが、目の前に現れたような気がしたからだ。

コレット作の Le blueu en herbe ・「青い麦」は、永遠の青春小説として、今なお多くの人々に愛されている名作である。

フランスの避暑地ブルターニュの海岸で、幼い頃から夏休みを一緒に過ごしてきた16歳のフィルと15歳のヴァンカ。
大人になる前の揺れ動く心と体に戸惑いながら過ごす、それぞれの夏・・。

私は少女ヴァンカの名前に興味を抱いた。
彼女の瞳の色は、春雨の色をたたえたツルニチニチソウのような青い色と文中にある。
青い色といってもいろいろあるし、果たしてツルニチニチソウの青い色とはどんなブルーなのだろうか。

この植物は学名を、ラテン語で Vinca major (ヴィンカ・マヨール) というハーブだ。
しかも、Vinca をフランス語で発音すると、ヴァンカ となる。

そうか、草花やハーブが大好きなコレットは、
ヒロインの名前や身体的特徴などに、
さりげなく知識や好みをちりばめていたのだ。
この花の色を実際に知ってから、私のヴァンカに対するイメージは変わり、
傷つきやすいデリケートな心と嫉妬心、恥じらいを併せ持ち、
少女から女へと変わり行く姿を、垣間見たように思った。








このヨーロッパ原産の耐寒性ハーブは、
最初はたった1鉢だったのに、
今やコンクリートの擁壁をカバーし、青い花が咲きそろうまでに繁茂している。
ハーブといっても、アルカロイドを多く含む薬草なので、
素人が安易に用いると危険なこともあるので、要注意だ。
丈夫な性質と、照りのある常緑性の葉が美しいため、
グランドカバーとして、緑化に使うと素敵だと思う。
花の小さなヒメツルニチニチソウも愛らしいし、赤紫の花もある。
黄色の斑入りの葉は辺りを明るくしてくれるのが嬉しい。


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